銀河径一郎 小説、物語の部屋

銀河径一郎による不思議な物語、怖い話、面白い小説、ファンタジーなど。

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これは久しぶりに思い出した実話なんですが、タイトルすごい(笑)
いや、殺されかけたのに久しぶりに思い出す程度なのかと突っ込まれそうだ


殺されかけた話

 その頃、私は小学4年生だったと思う。
 当時、私は東北の比較的大きな街に住んでいた。その地方都市は地価の高い東京と違って土地の使い方が鷹揚で、私の住む社宅マンションにも友人の住む社宅マンションにも敷地内に子供が遊ぶのに十分な広場があった。
 私は小学2年の時、大学病院の医師に「手術しても治らない」と言われてショックを受けていた(高校になってから医学書を漁って自分の発作は脳内の乳頭と言われる部位のうっ血によるものだと判明したのだが)。とにかく小学2年以来、自分は死神の手に絡め取られているのだと深刻に考えて人生の短さを妄想していつでも先を急いで走っているような子供だった。毎晩、明日の朝には発作で死んでるのではという不安で寝付けないので睡眠時間はナポレオン並みに短かった。それでも日中眠いということもなく授業は真剣に聞いていたので成績はよかったと思う。

 ◇

 友達の社宅の広場は小学生の感覚で遊びのサッカーが出来るぐらいに広くて、雑草が芝生のように覆っていた。土筆が生えたり、四つ葉のクローバー探しができたりと都会からすると羨ましい環境だった。
 空は雲はあるものの晴れている部分もあり明るかった。
 僕と同級の友人二人とその妹が広場にいたのだが、本格的な遊びには人数が足らずもう少し人数が増えないかなと話をしながら待っている状態だった。
 僕が何か話しかけようとした時、そいつは突然に僕の横に現れた。
 なんだろうと見る間もなく、そいつは僕の肩を掴んできた。
 そいつの名前は知らないが、顔は見たことが何回かあった。
 広場のすぐ近くに幅1メートルほどの小川があり、その低くなっている向こう岸にトタン屋根の住まいがあった。その向こう岸から小川にかかる渡し板のあたりで登校途中に何度かそいつの顔を見かけた事があるのだ。
 そいつの顔は東南アジア系で、年齢としては中学生か高校生ぐらいなのだが、本当に学生かはわからない。

 そいつは僕の肩に手をかけて押し倒そうとしてきた。
 そいつは言葉を発することはなかった。
 いや、もしかしたら何か言ったのかもしれないがわからない言葉で、僕はそう感じたのかもしれない。
 とにかく僕は訳がわからなかった。
 小学4年生からしたらそいつの体格は圧倒的で、極めて不利な状況だった。
 僕は救いを求めるように友人を見たが友人は遠巻きにして眺めるばかり。
 いやそればかりか、むしろ僕の危機から一歩一歩と後ずさりしてゆく。

 僕はそいつに雑草の上に押し倒され、そいつは僕の首に手をかけ絞めてきた。
 もはや友人たちは視界から外れてあてにならなかった。
 僕は考えた。
 なぜ、一度も話したこともない相手に首を絞められなければならないのか。そいつの家には近寄ったこともないのだ。過去にほんの数回ちらりと顔を見ただけだ。
 どう考えても僕には少しも思い当たることがなかった。
 そいつの手は僕の首を絞め続けている。

 腕力ではもはや小学生の僕がそいつを跳ね返すことは無理に思えた。
 そこで僕は咄嗟に考えた。
 死んだふりをしよう。
 僕が死んだと思わせたらそいつも首を絞めるのをやめるだろう。
 実際に絞殺された場合にどういう過程を辿るかなんて知る筈もないから、自分の想像力による演技を決心して僕はすぐさま実行した。
 僕は目を閉じて、閉じた唇から唾をゆっくり吹いて泡をぷくぷくと立てた。
 そしてぐったりとして見せたのだ。
 薄目で見ているとそいつは僕の狙い通り首を絞めるのを止めて立ち上がった。

 やった。
 訳のわからない人殺しから僕は助かった。

 そう思ったら、急に安心して僕の顔に笑いが溢れた。
 運悪く声までちょっと漏れてしまった。

 立ち上がり去りかけていたそいつは、急に僕の顔を振り返って、怒った表情で再び僕の体に馬乗りになって僕の首を絞めてきた。
 もうだめだ。
 そう思いつつも、一度はまんまと人殺しのそいつを欺けたことで僕の笑いはもう止まらなかった。
 僕は知恵で人殺しに勝ったのだ。少なくとも一回は。
 それにお前に殺されなくても明日の朝には僕は死んでるかもしれないのだ。こっちは毎晩死ぬことを考えてるんだぞ。僕はお前なんか怖くない。
 僕は首を絞められながら、もう声を隠さずに笑っていた。
 
 そいつは僕が不気味になったのかもしれない。
 あるいはそいつは僕が人違いだと気づいたのかもしれない。
 理由はわからないが、そいつは不意に僕の首を絞めるのは止めると立ち上がった。

 僕はしばらくのんびりとうっすら青い空を眺めていた。
 そして思い出したように立ち上がった。
 そいつの影も、友人たちの影も、もうどこにも見えなかった。
 タンポポの羽がひとつ風に乗ってふわと流れて行くばかりだ。

 ◇

 これが私が殺されかけた話の全てである。
 久しぶりに思い出しながら、もしあの時、普通に抵抗するだけだったら本当に殺されていたかもしれないと気づいたりする。



話としてはひとつ盛り上がりに欠けますが、リアル話ですから仕方ないところ。
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コメント

ほんとにタイトルがすごい。でも読み終えたあと、笑ってしまいました。死んでたかもしれないなんて、笑えない話のはずですが……。
相手の子も殺人犯にならなくて良かったですね。思春期とかでいろいろと鬱積してたのかもしれません。
銀河さん、当時からきっと賢い子だったんだろうなって思います。

  • 2010/07/13(火) 19:01:59 |
  • URL |
  • 七花 #-
  • [編集]

◆七花様 ありがとうございます。

タイトルの割に中身は子供のとんちみたいな話ですからね(笑)
自分史的にも重要度の薄いイベントなんですが、別な話を書き終えてふと思い出したので。でも相手の肩は持たないでいいよ(笑)

  • 2010/07/13(火) 23:54:26 |
  • URL |
  • 銀河径一郎 #7VZ5bVfM
  • [編集]

こんばんは☆

えっと、実話なんですか?(・・∥)
しかし咄嗟に死んだ振りをしようとは、考えましたね。
本当に何だったんでしょうね? その殺人未遂君。理由も解らず殺されちゃあ……化けて出らずにいられませんよ☆

  • 2010/07/14(水) 00:08:06 |
  • URL |
  • 巽 #jdMQ17Ic
  • [編集]

私もタイトルのインパクトと実話だってことにびっくり!
「銀河さん、逃げて~!」とハラハラしながら読みましたよ(笑)
子供の頃の記憶って不思議ですよね。
「こんなインパクトのあることを、どうして今まで忘れてたの?」ってことが私にもあります。
きっと今よりずっと新しいことや驚くことがあって、世界が謎と不思議に満ちていたせいなんでしょうね。
なにより銀河さんが殺されなくて本当に良かったです♪

  • 2010/07/14(水) 00:46:39 |
  • URL |
  • ia. #Y2KmYycQ
  • [編集]

◆巽様 ありがとうございます。

驚かしてしまいましたが実話なんですよ。
>しかし咄嗟に死んだ振りをしようとは、考えましたね
そうですね、じたばた抵抗したらやばかった。相手が熊だと考えたのか。いや、熊には死んだふりは無効か(笑)
そこで殺されてたら、巽さんとは話の登場幽霊として交流してたんでしょうな。良介君みたいに(笑)

◆ia. 様 ありがとうございます。

実話なんて隠せばいいのに、コメントしづらくしてすみません。
私としては医者に「手術しても治らない」と言われた方がよっぽどショックでした。ヤブ医者め。

>なにより銀河さんが殺されなくて本当に良かったです
ふふっ、もしや不死身なのか。今度、K-1にでも出てみますか(笑)

  • 2010/07/14(水) 01:14:50 |
  • URL |
  • 銀河径一郎 #7VZ5bVfM
  • [編集]
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gingak
  • Author: gingak
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    (ケイイチロー・ギンガ)
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    『地球人も宇宙人』。
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