こころは朦朧とした意識で佐藤先生の声を聞いた。
「こころちゃん、よく頑張ったな、もう大丈夫だぞ、サーッだ」
こころは微笑んで小さく「サー」と言った。
続けて佐藤先生は、面会のガラス越しに見守っていたこころの両親にも報告した。
「峠は越えました。
娘さんの白血球も増えて闘ってくれてます。
もう大丈夫でしょう」
両親は口を揃えて「ありがとうございます」と礼を言った。
夕方、ようやくすっきり目覚めたこころは、真っ先にヒロキさんにメールした。
《ヒロキさん、こんにちは!
昨夜は私、かなり危なかったみたい、でも乗り切ったから安心して!》
ヒロキさんからすぐに返事が来た。
《そうか、ちょっと心配してたから、すごく安心したよ!》
《でね、車椅子のウィリー・シドニーさんが夢に出てきてね、実は僕はヒロキなんだって白状したんだ。
ヒロキさん、本当に車椅子のウィリー・シドニーなんじゃないの?》
《それは会った時のお楽しみにしとこうよ》
《エー、ずるいよ。
ヒロキさん、やっぱりウィリー・シドニーなんでしょ?》
《だって、あの廊下で会った時、副作用で毛がなくて顔がふくれてるから会うのは絶対イヤって言ったのはこころちゃんだよ》
こころはびっくりして、すぐに嬉しくなった。
《アーッ、やっぱり!
そうじゃないかと思ってたんだ!
よかった、ヒロキさん、車椅子でもカッコよかったよ!》
《アハハ、惚れてしまえばアバタもエクボだな!
こころちゃんも本当はもっと可愛い顔だってのは知ってるから、
実際に会って、僕も惚れ直したよ!》
《キャッ!嬉しいですぅ!
ヒロキさん、大好き!愛してます!》
《うん、僕もこころちゃんを愛しているよ!
こころちゃんに巡り会えてよかったよ!》
《それから、昨夜の夢ではね、一面きれいな花畑でもヒロキさんに会ったの!
その時はヒロキさん、車椅子じゃなくて、立っていたんだけど。
ずっと前にデートで行くところの写真見せてくれたでしょ、あんな感じかな。
私に花畑で会ったこと覚えてる?》
《まさか、さすがにこころちゃんの夢の中の出来事までは覚えてないよ!》
《ヒロキさん、最初は笑っていたけど、突然、泣き出したの。
どうしてかな?》
《さあ、僕が泣くとしたら、たぶん、こころちゃんがやばくて死ぬんじゃないかと怖かったのが、
無事に会えたからじゃないかな》
《納得!実際、昨夜はかなり山だったみたいで、両親がずっと面会のガラスの外にいて見守ってくれてたんだよ!
ヒロキさんにも心配かけてごめんなさい!》
《もう大丈夫って知って、すごく安心したよ!》
こころは安心して携帯を抱きしめた。
(つづく)
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