マスクをした佐藤先生がもう一人の若い先生を連れてやってきた。
「こころちゃん、僕は関西で学会があるから、3日ほどいないんだ」
こころは思わず声を上げた。
「先生!」
「そうかそうか、そんなに寂しいか、でも仕事だからね」
「そうじゃなくて、お土産、忘れないでね」
こころのおねだりに佐藤先生、呆れたようだ。
「なんだ、お土産かよ?
看護士さん、受け持ちみんなに買うの大変なんだぞ。
ま、いいや、それで留守の間は、この研修医の望月君が代わりに診てくれるから。
俺に対するみたいに馴れ馴れしくすんなよ」
「望月です、よろしく」
眼鏡をしてない望月先生はマスクから覗く目が切れ長だ。
「こころです、よろしくお願いします。
それで、佐藤先生、私、先生が帰る頃にはこの部屋を出れるんじゃないの?」
佐藤先生はカルテをしばらく眺めた。
「うーん、まだ数値が上がってないから、この調子だと、まだじゃないかな」
「意地悪なんだから。
望月先生はこういうの見習わなくていいですよ」
「ハハハ、結構、言うだろ」
「ええ、元気ありますね」
佐藤先生と望月先生は顔を見合わせて笑った。
「卓球部なんだぜ、治療終わったら一緒にサーってガッツポーズするんだ。
な、こころちゃん?」
「うん、絶対、ガッツポーズしますよ!」
こころは拳を構えてみせた。
「たのもしいですね」
「じゃあ、次は4日後にな」
佐藤先生はそう言って手を振って、望月先生と部屋を出て行った。
こころは携帯でヒロキさんにメールを送る。
《こんにちは、こころです!
先生が学会行くみたいで、お土産をねだっておきました(笑)
ヒロキさんも、まだ入院ですか?》
5分ほどでヒロキさんから返事が来た。
《こんにちは!
お土産かあ、どうなんだろう(笑)
そう、まだ病院だよ、お互い頑張ろうな!
愛してるよ!》
こころは携帯の画面を胸に押し当ててうなづいた。
(つづく)
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