ちょっと探したけど、車椅子の彼、ウィリー・シドニー(?)の姿はない。
こころは思い切ってヒロキさんにメールを打っている。
《こころです!今日はなんだか曇ってますね。
でも、私、決断しました。骨髄移植します。
私の病気は薬だけだと治りがあまりよくないので、
悪玉が隠れている自分の血を全部壊して、他人から骨髄をもらって入れ替えるんです。
ヒロキさんには全部言えないぐらい、大変な治療になるけど、私は決断しました!
だって、きっと元気になってヒロキさんに会いたいから。
私、絶対、治ってみせますよ!》
メール文を読み返して、中庭の木々を眺めた。
こうしている間もこの病院の中でたくさんの人が命がけで病気と闘っている。
それを、中庭の木はどっしりと立って見守っているのだ。
健康ならこんなこと気付かないけど、病気と闘ってる人間と治してくれる病院の人達と、中庭の木は、みんな生命つながりなんだって思う。
私もきっと勝って、ガッツポーズしてみせる!
そう心につぶやいて送信ボタンを押し、しばらく庭の木々を眺め続けた。
ヒロキさんから返事が来た。
《こころちゃん、決断したんだね!
噂で大変だってのは知ってたけど、こころちゃんの決断はきっといい結果につながると確信しているよ!
まずは決断、ごくろうさま!
愛するこころと会える日を楽しみに応援してるからね!
僕も負けずにがんばるよ(笑)》
こころは微笑みながらメールする。
《ところで、ヒロキさん、ウィリー・シドニーて知ってますか?
病院の廊下のソフアのところで一緒になった車椅子の人に名前を聞いたら、
そう答えたんだけど、謎なぞみたいで、すごく気になるんですよ》
《ウィリー・シドニー?
もしかしたら、小説に出てくる人じゃないかな?
その車椅子の人は、自分が彼に似てると思ってそう名乗ったんじゃないかって、
そんな気がするよ》
《そうですか、私、あんまり小説読んでないからなあ。
ヒロキさんは小説とか読みますか?》
《僕もそんなには読んでないけどね(汗)
ヘミングウェーとかモーパッサンとかチェーホフとか、外国の短編が好きだよ》
《そうなんですか。
私も入院生活はまだまだ長いから、これからいろいろ読んでみます》
《うん、こころちゃん、がんばれ!
愛してるよ!》
こころはヒロキさんの励ましに大きくうなづいた。
(つづく)
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