銀河径一郎 小説、物語の部屋

銀河径一郎による不思議な物語、怖い話、面白い小説、ファンタジーなど。

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ネット小説情報局に、昔、私のブログが「作品一覧表テーブルを
トップに置いて、その表から入る形をとってる」と書き込んだところ、
今でも時々見に来てくださる方がいます。
ここで具体的にトップに作品のテーブル一覧表を作る方法
書いておきます。

※念のために日付連番等を入れた名前でバックアップして
自己責任で修正してみてください。

まずhtmlを編集のできるブログであることが条件です。
html編集のできるブログは FC2、シーサー、ソーネット、ライブドア
などです。他にも少しだけhtml編集できるものもあるようです。

htmlとは何やねんと聞かれると困りますが、要はコンピューターが
ブログを表示するための設計図と思えばいいかと。
ちなみにCSSというのは文法の部品みたいなものです。


html編集のできるブログなら、タイトルの下、記事エントリーの上に
テーブル表をhtml文形式で貼ってやればよいのです

私が使っているのはFC2ブログですので、他のブログではどうなのか
はわかりかねます。(ライブドアではうまくいかなかった○| ̄|_
10/30 ライブドアの場合を追記しました)

例はFC2ブログの場合ですが テンプレートの設定からHTMLの編集

<!--index_area-->

 ←ココに テーブル表を入れます

<div id="mainBlock">
<!--エントリー-->
<!--topentry-->

ではテーブル表ってどういうふうに作ればいいのという方は以下の素晴らしい
案内ブログ様に飛んでみてください。懇切丁寧に書かれてます。

初心者でもできる簡単FC2ブログの作り方 さんへ


簡単に言うと<table border>と、</table>で囲まれた部分が
作品一覧のテーブルになります。


ブログなら幅の制限もあるのでテーブルも1行1列で、縦に
連結してゆくのが基本的な形だと思われます

<table border>
<tr>
<td>最初の行 作品リンク </td>
</tr>
<tr>
<td>行2 作品リンク </td>
</tr>
<tr>
<td>行3 作品リンク </td>
</tr>
</table>


背景に色をつけたければ bgcolor="#FAFAD2" などを足してやる
web色見本等で検索すると使いやすいページがあると思いますので
#プラス6桁の文字をコピペすればいいのです。

そして作品にリンクする部分は<A href="http://gingak.blog117.fc2.com/" ><u>小説「むふふ」 へ</U></A>
というurl文を行要素に入れ込めばよいわけです。
<u>はアンダーラインがつくという意味で、リンクとわかりやすくなります。
実際に表に出る文字は 小説「むふふ」 へ だけとなります
もちろん実際のurlにはcom/以下に記事番号が続いているはずです。

記事をテーブルに足すには
1行の部品は<tr>の先頭から、</tr>の末尾までの部分を慎重にコピペして
行要素のみを修正すればいいわけです。
<tr>
<td>行要素</td>
</tr>

行要素内で改行する場合は<br>をつけます。

フォントをいじりたければその文の前を<font>として中に
書体やサイズや色の指示を入れ、文の後を</font>で閉じます


いろいろさわってみると発見もあるかもしれませんね。
バックアップしてから試してみてください。

10/30追記 ライブドアの場合
デザインのカスタマイズで、トップページタブを選択
<$IndexNavigator$>の下行にテーブルを入れて、反映してみて下さい。

もしテーブルが認識されないなら、さらにフリーエリアにもテーブルを追加
してから一旦反映更新します。
するとテーブルが現れて、その後はフリーエリアを削除してもいけました。





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有名な「春はあけぼの」の段を思い出しながらお読みください。
短いですが、原文に音か韻を合わせようとすると結構頭を使う、と言い訳しとく。



 パンは焼きたて。やうやう柔らいだる耳際、少し硬くて、
 紫だちたるベリーの、細く塗り延ばしたるに、
 蜂蜜の重ね塗りたるはいとお菓子。

 夏美が夜、小突きたる冗談はさっぱり。
 いやみもなほ、噂の多く飛び交いたる。
 また、ただひとつふたつなど、ことのほか、怒り返すもおかし。
 飴など降るもお菓子。

 亜紀は気まぐれ。夕日の紅差して、山場近くなりたる合コンに、
 カスばかりね、帰って寝るわとのたもう。
 三人四人、二人三人と驚いた男が飛ぶように追いかけるは哀れなり。
  
 朝は通勤。雪の降りたるは言うべきもあらず起きるは難儀なり。
 またさらでも寒きに目覚ましなど急ぎ起こされ、
 スイカ持ちて改札に入るが止められるるはいと憎々し。




夏美さん、亜紀さん、気にしないで。名前は偶然の一致です(^_^;

有名な原典はこちら
 (詳しくみると上のと、いろいろ違いますが、無理を言ってはいけません)

 春は、あけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少し明りて、紫だちたる雲の、細くたなびきたる。
 夏は、夜。月の頃は、さらなり。闇もなほ。蛍の多く飛び違ひたる、また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くも、をかし。雨など降るも、をかし。
 秋は、夕暮。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の、寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへ、あはれなり。
 まいて、雁などの列ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風
の音、虫の音など、はたいふべきにあらず。
 冬は、つとめて。雪の降りたるは、いふべきにもあらず。霜のいと白きも。
 また、さらでもいと寒きに、火など急ぎ熾して、炭もて渡るも、いとつきづきし。
 昼になりて、温く緩びもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりて、わろし。

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 不況のせいで動物園は危機に瀕していた。
 餌が減らされ、病気は治療されず、時には侵入者により誘拐され食糧にされる事件まで起きた。太平洋戦争の時、空襲の際に逃げ出すと危険だと殺された猛獣たちの例を見るまでもなく、人間たちはいつも身勝手だ。
 201X年、そんな動物たちを人間たちによる理不尽な被害、絶滅の危機から守るべく動物園保護法が成立、動物園防衛隊が組織されたのである。
 実はアメリカでも不況でアニマルポリスが大量解雇され日本でその就職口を提供してくれという外交圧力があったという生々しい側面もあるのだが、それはさて置き。

 これは伊賀忍者村における動物園防衛隊教育隊の特別訓練における女性二等哺乳類隊員横山悠の話である。なお動物園防衛隊では訓練生の階級は男女とも一律に二等哺乳類と呼ばれている。

 ◇

 忍者村での訓練は過酷だった。
 寒空の下、迷彩服に布一枚持たされ、石垣になりきれとか、地面に同化しろとか言われて、じっとして耐え続けなければならない。
 少しでも動いたりぼやいたりすれば、歩き回っている、顔はまあまあだが態度が鬼修羅という教官玉島の竹刀が振ってくる。ちなみに教官の階級は上等哺乳類である。
 手裏剣訓練ではなかなかきれいに的に刺さらず、ノルマを達成できない悠は昼ご飯抜きで手裏剣を投げ続けなければならなかった。

 しかし、一番過酷なのは水遁(すいとん)の術訓練だ。十メートルはある池の岸から岸までの平均深さ2メートルちょっとの水底を装備背嚢をつけ、動物園防衛隊の制式銃である麻酔銃を背負ったまま歩いて渡らなければならないのだ。しかも息継ぎは大き目の折り曲げストローだけだ。本当の忍者ではないのだから大変である。 
 それでも同僚の咲良、穂香、莉央たちはなんとか池の底を渡り終えて、向こう岸で座り込んで息をついている。

「よし、次、横山悠二等哺乳類、開始」
 教官の号令とともに、身長153センチの悠もここで負けてはいけないと、ジャバシャボと池に歩み入った。それに悠には他人より頑張る理由があった。教官玉島に惚れているのだ。

 池の底を半分ほど進んだ悠は足の下に岩があるのに気づき、ひと休みしようとした。
 ところが体重、もちろん水中だから普段よりずっと軽い体重だがそれをかけた途端、岩に苔がついていたのだろう、足が岩から滑ってしまい水を飲み込んだ。水が入ってくると悠はパニックになった。
 そこへいち早く気づいたのは教官玉島であった。
「いかん」
 教官玉島は颯爽と池に飛び込んだ。
 そして溺れている悠の背後にまわる。パニックの人間がつかみかかると救助者が泳げなくなるから、背後から助けるというのが水難救助の鉄則だ。
 教官玉島は悠の首を後ろから抱えるようにして陸に引き上げた。
 
 そして教官玉島は帽子と自分の首に巻いていたスカーフをまるめて悠の首の下に入れ、悠の鼻をつまんで口を近づけた。しかし、意識の残ってた悠は、好きな相手なのだからじっとしてればよいということに気づきもせず、反射的に教官玉島の顔を払いのけた。上体を崩した教官玉島は慌てて左手で悠の左胸を掴んでしまった。
「だ、大丈夫か、横山悠二等哺乳類」
「は、大丈夫であります」
 教官玉島はさりげなく左手を引っ込めた。
「無事でよかったな」
「はい」
 悠は襟を押さえて頷いた。 

 ◇

 忍者屋敷に隣接する宿舎。
 服を着替えた悠は教官室のドアをノックした。
「教官、横山悠二等哺乳類、入ります」
「よし」
 中から許可があり、悠は入室、敬礼をした。
 教官玉島は何かの書類を見たまま質問する。
「どうした?」
「教官はさっき、私に人工呼吸をされかけ私の胸をつかみましたよね」
「う、なんだ?」
 教官が目を上げた。
「日誌にセクハラと書いていいですか?」
 日誌は教官玉島の上官である教育隊特上等哺乳類の鮫虎管理官も目を通す。変なことを書かれると大問題なのだ。
 てっきり礼を述べに来たのだと思った教官玉島は立ち上がって怒鳴った。
「バカか、お前の命を助けてやってセクハラ呼ばわりとは天地がひっくり返るわ」
「だって、私が乳房を揉まれたのは初めてであります」
「いや、揉んではないだろ、偶然つかんだだけだ」
「偶然は重いセクハラであります」
「違うぞ。スケベで掴んだらセクハラだが、偶然は偶然で終わり」
「教官は勘違いしてます。偶然で掴まれるのはスケベのセクハラよりかなり悲しいセクハラなのです。まして私は貧乳で初体験、傷つきました。セクハラと書きます」
「自分で貧乳言うな。セクハラと書くな」
 教官玉島の顔に困惑が浮かんでいた。敵に隙が出来たと悠は勘違いした。
「ここで、すいとんの術という単語を繰り返してよいですか?」
「意味不明だが、発言を許す」
「すいとんの術。すいとんのジツ。すいとんのんジツ、ジツすいとるのん。実は、好いとるの、教官玉島雅人殿のこと。きゃはッ」
 悠は告ってやったと思うより、恥ずかしさの方がひどかった。おそらく今の自分は湯上りの仔豚のように赤くなってる筈だ。
 しかし、予想に反して教官玉島は反撃に出た。
「今の発言は俺に対するセクハラだな。彼女いない歴=在隊歴の上官の心を弄んだ」
「え、そうなんでありますか?」
 ということは6年ぐらいは彼女なしか、とにかく彼女なしだ。悠はやったと思った。いや、冷静に考えればすぐ振られるという結論かもしれないのだけど。
「俺の入隊動機は表向きは動物への愛だが、実態は失恋からの逃避だ」
 教官玉島はそこで目を伏せたかと思うと思い切り落ち込んだ。
「それはそれはご愁傷様で」
 悠は教官玉島の思いがけない告白に驚いたが、自分の意見も忘れてない。
「し、しかしひどいであります。自分は一号訓練塔から飛び降りるつもりで告ったのに、セクハラで片付けられるなんて」
 高さ30メートルの一号訓練塔からの降下は全訓練課程の最後に控える最も怖ろしい訓練として入隊直後から知れ渡っている。
「俺のセクハラとお前のセクハラでちゃらだ。絶対に日誌に書くなよ。書いたら不名誉除隊にしてやる」
 そんなことで悠の納得がいくはずもない。
「ずるい、断られるのを覚悟して勇気出して告ったのに返事がなくてセクハラだなんて、人権侵害です。最高裁に訴えてやる」
 教官玉島は怒鳴った。
「うるさい、口答えするな。そのまま足を踏ん張れ」
 教官玉島は開いた手を振り上げて悠の目の前にすごい勢いで踏み出してきた。
 ヒッ、ぶたれる。
 悠は思わず目をつぶった。
 しかし、手のひらは頬をぶつ代わりに悠の顎をそっと持ち、悠の唇に同質の柔らかいものがぺたっと触れた。
「あの、教官」
 悠が思わず聞くと教官玉島は答えてくれた。
「俺も貴様にすいとんの術だ」
「あっ」 
「今のはどっちがどっちにセクハラだ?」

 しばらく、悠と教官玉島は唇による相互セクハラに浸ったのであった。  了




 今回は長編書き終わった気の緩みで魔が差し、某リクエストに応えました(笑)
 どっかで聞いたような設定かもしれませんが、図書館シリーズは読んでません。男が買う内容としては微妙に高いし、図書館で予約しますかと聞かれ恥ずかしくて、いいですと断りましたから(笑)

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 あれは高度経済成長が始まった昭和の事。私は赤坂のとあるホテルのボーイだった。
 そこへ有名な外国女優がお忍びで来たことがあった。運良く私が担当になった。

 ◇

 女優は首が少し高く、その上とても小顔で美の終着点みたいな容貌だった。
「あなたは何時に仕事が終わるの?」
 女優は大きな瞳で僕を見てゆっくりとした英語で聞いた。僕が戸惑って彼女の向かいのマネージャーを見るとマネージャーは壊れた扇風機みたいに頭を水平スイングした。
「すみません、答えられません」と僕は英語で答えた。このホテルではその当時から接客するスタッフは英会話を叩き込まれていたのだ。
 女優はちらっとマネージャーを睨んで言った。
「いいの、私が聞いてるんだから」
 マネージャーは手を叩くようにして直前ですれ違わせてソフアに横向きにもたれかかった。どうにでもしろと読めた。
「あなたは何時に仕事が終わるの?」
「今晩の9時ですけど」
「いいわ、明日の5時に迎えに来てちょうだい。行ってみたいところがあるの」
「あ、僕の仕事はボーイです。運転手ではないのです」
「ええ、仕事は明日一日休みを取ればいいでしょ。できなきゃ、そこのスコットがあなたを一日貸切りにするから大丈夫だわ」
 彼女の北欧の霧で青みがかったようなブラウンの瞳で見詰められたら、どんな男だって「逆らう」という言葉を急いで辞書から破り捨てる筈だ。それに彼女を乗せて運転できるなんて光栄を逃す男もいない。付け加えると女優は既婚だ。もちろんボーイ相手に浮気する筈もない。単純な好奇心で観光にぶらりと訪れたんだろう。
「わかりました、明日の5時ですね。車はご希望がありますか?」
 僕は彼女の希望する車をどうやって調達したらいいか心配しながら言った。
「いいえ、あなたの小さな車でいいわ、持っていればね」
「わかりました。車はスバルの360です、フォルクスワーゲンのビートルみたいな車です」
 おそらくリムジンに乗りなれてる筈の女優は猫のように小さく舌を出して微笑んだ。
「ビートルは知ってるわ。日本のカブトムシ、素敵ね」
「では、明日夕方の5時に迎えに来ます」
 僕が確認すると、女優は驚いて言った。
「まさか、5時は朝に決まってるでしょ」
「オーマイガッ、リーリィ?」
 僕は思い切り叫んだ。早朝は全く苦手なのだ。
 
 フロントの宿直に事情を話したら、モーニングコールを引き受けてくれた。もちろん、事情がなかったらガスボンベで殴られてたと思う。
 とにかく僕は朝の4時に着信音がひとつ鳴るやすぐ受話器を持ち上げて、興奮して全然眠れないんだと打ち明けた。宿直は頑張れよと応援してくれた。

 ◇

 5時きっかりにドアをノックすると、毛皮のコートを着て、首に巻いたスカーフに半分顔を埋めた女優が現れた。
「おはよう。よく眠れた?」
 そう聞かれて、僕は答えた。
「ええ、陸に上げられて一晩経ったマグロみたいによく寝ました」
 女優はびっくりした。
「そう、私が行きたかったのはそこよ。あなたはとっても勘がいいわ」
 女優は微笑みながらサングラスをかけた。女優はフランスパンを抱え持って車に乗り込んだ。

 はたして魚市場に観光客が入れるものか心配だったが、僕はスバル360に女優を乗せて築地市場に着いた。
 すると女優はまるで昔からの関係者みたいにすたすたと中に歩み入ると、僕を振り返った。
「すごいわ、あんなに大きなマグロがたくさん寝てる。まるで昨夜のあなたみたいにね」
 僕は嘘をついた罪悪感を感じながら急いで彼女のそばに立った。
 そこにいた強面の男が手を振りながら近寄ってきたのだ。
「だめだ、だめだ、見せ物じゃないんだ」
「申し訳ありません。でも彼女ははるばる外国から来たので少しだけ見せて下さい」
「だめだめ、例外はねえんだよ」
「そこをなんとか、彼女に良い印象を持ってもらえば、日本にとってもよいことです」
「だめだっつうの」
 だんだんゴムの長いエプロンをした男たちや、ひさしのついた帽子を被った男たちが集まり、僕は人数で圧倒されてきた。もっとも女優はそんな男たちの不機嫌な顔ひとつひとつが興味深いらしく一歩も動かず眺めている。
「とっとと帰れよ」
 一人の男が女優の肩を押そうとした。
 僕はその手を払い落とし思わず叫んだ。
「無礼だ。このひとはアン王女だぞ」
 男たちが一瞬で固まった。
 もちろんそれは役名だけれど、その方がわかりやすい筈だ。
 僕が「それを取って見せて下さい」と頼むと、女優はサングラスを外して美しい瞳でにこやかに微笑んだ。
 男たちの口が死んだ魚みたいにぽかんと開いた。
「あれだ、ほら」
「俺、観たぞ、ローマの休日」
「そうだ、ローマの休日だあ」
「すげえよ、アン王女様が築地に来たのか」
「じゃ今日は、東京の休日かい」
 それまでの険悪な雰囲気が一変した。当時はまだ映画の黄金時代。普段は日活アクションやヤクザ映画に通う男たちも、大ヒット作「ローマの休日」は常識のように観ていた。

「私、マグロのサンドイッチが食べたいわ」
 女優はそう言って猫のように微笑んだ。
「マグロを少し試食できますか」
 僕が通訳すると、男たちはいっせいに動き出した。僕が車にフランスパンを取りに行って戻ってくると、すでに大きなまな板にマグロ一匹分ありそうな刺身が山盛りになっていた。
 僕はフランスパンを柳葉包丁でカットしてもらい、それにトロを乗せて醤油をたらしその上にまた薄切りパンを乗せて女優に渡した。
 女優は両手で持ってパクつくと、咀嚼してる間中うなづいた。
「トレビャン」
 女優が微笑むと、一斉に拍手が起きた。
 拍手の中で「そら見ろ」と誰かが叫んだ。

 ◇
 
 トロのサンドイッチを食べ終えた僕と女優はゆったりと市場の中を歩いた。
 途中、あんこうがあったので、僕は女優に説明した。
「日本ではこれが真実の口と呼ばれています。偽りの心がある者は手が抜けなくなります。もちろん僕は正直者だから問題ないです」
 そして僕はあんこうの口を開けて手を入れて、手が抜けなくなりオーオゥッチと痛がるふりをした。
 女優は手を叩いてキュッキュッキュッと笑って喜んだ。
 続いて女優は自分でもあんこうの口に手を入れた。そして声を上げてグレゴリー・ペックより上手に痛がる演技をしてから手を抜くと、毛皮のコートの袖中に手を隠して僕に見せた。
 その時の悪戯っぽい目がとっても可愛らしくて危うく僕は失神しそうだった。
 ギャラリーからも大拍手が湧いた。

 ◇

 僕らは雷門、浅草寺と銀座をめぐって、レストランで食事して、皇居のほとりを歩いてホテルに戻った。もちろん僕にとって生涯最高のデートの思い出だ。翌日、女優はチェックアウトして帰った。
 
 1961年、映画「ティファニーで朝食を」が公開された。
 残念ながらその後「築地市場でも朝食を」という映画はなかった。   了



 フィクションもここまで来ると爽快です(^_^;

こちらが有名な「ローマの休日」 



'真実の口'のシーンの時、グレゴリー・ペックが手が挟まったふりをすると知らされずにオードリーは
撮影に臨み、この後は彼女のアドリブだそうです、すごい自然ですよね(驚)

 オードリー・ヘップバーンは天性の女優ですね。
 2004年の日本の調査でも好感度1位というのだからすごすぎる。
 改めて振り返るとあまり観てない。観てないくせに書くなと叱られそうです。
 
 天真爛漫そうな彼女も実は戦争でナチスに辛い思いをさせられています。
 同い年のアンネ・フランクには共感が強かったようですが、あまりにも悲しい
 辛い思い出のためにアンネ役の打診に固辞してます。

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「タツマキだあ」
「竜巻が来るぞお」
 自転車に乗った数人の小学生が口々に叫んで道を走ってゆく。

「うるさい、ガキどもだな」
 せっかくの日曜日、しかも天気は快晴だというのに。
 二階のベランダから妻の聖美も顔を出してきた。 
「竜巻なの?」
「いや、子供の遊びの話じゃないかな」
 そう言うと、妻は奥に引っ込んだ。

 こっちは娘のピンクの小さな自転車を磨き上げたところだ。ハンドルの前かごには女の子に人気らしいキューティーフラッシャーのイラストがはめ込んである。たぶんセーラームーンから派生したコスプレで戦隊モノの影響を受けつつ、猫のペットもメンバーに加えた正義の味方的少女たちのアニメと思われる。
 午前から自分の車を洗車していたら、3才になる娘の聖羅に
「パパァ、あたちのお車も洗ってくだしゃい」
 とお願いされちゃったのである。
 もちろん、わが天使の願いだから、早速取り掛かった。
 たいして汚れてなかったけれど、水洗いし、拭き取り、タイヤまでワックスをかけて磨き終わったところなのだ。
 
 そこへまた二階のベランダから妻の聖美が声をかけてきた。
「あなた、なんか西の空が急に曇ってきたわよ。
 ほんとに竜巻だと怖いから中に入って」
「まさか、そんなに急に来るかよ」
 そう言いながら西の空を見ると、さっきまで雲ひとつなかったところに確かに濃灰色の雲があり、かなり速い速度でこちらへ移動してくる。
「じゃあ、お前も念のためとりあえず地下室に入れよ」
 俺はベランダの妻に言って玄関の中に駆け込んだ。
 
 地下室といっても台所下の床下収納を広くしただけの三畳に満たない部屋だ。高さも1メートルちょっとしかないから立ったままではいられない。
 台所の床板を開いてはしごを使って降りると、非常用食糧と飲料水ペットボトルの入った段ボール箱が積まれている。あとは寝袋と簡易トイレ。そしてラジオとノートパソコンがある。
 降りてきた妻と娘も加わって三人で、膝を立てて座り向かい合う。

「ママ、ビスケットいたあ」
 娘は目ざとくクラッカーの缶を見つけてしまったのである。
「だめ、あれはいざという時のためにとってあるの」
「ママ、お腹、空いたあ」
 むずかる娘の声に俺が言う。
「いいじゃないか、少しぐらい。俺がまた補充しておくよ」
 すると妻は「まったくあんたは聖羅に甘いんだから」と言いながら、さっさと缶を開けると娘に与えるより早く自分でクラッカーに齧りつく。
 こうして三人で非常用のクラッカーを食べ出した。
 妻が飲料水を飲みながら文句をつける。
「こういう時のために、水だけでなくてジュースもあった方がいいわね」
「まあな、でも遠足じゃないんだぞ」
 妻は俺の言葉には答えず、思い出したように言う。 
「で、竜巻はどうなったんだろ?」
「待てよ、こういう時はネットで調べるのが一番だ」
 俺はノートパソコンを起ち上げて気象庁提供の地域別データを調べたが、この地域に異変が起きた跡は見られない。
「どうもガセみたいだな、まったく迷惑なガキどもだよ。
 念のため一応、様子を見てくるから待ってろよ」

 俺は地下室から台所に上がり、玄関の外に出てみた。
 ざっと見渡したところ竜巻が吹き荒れてるところはなさそうだ。
 しかし、玄関に引き返そうと体を回転させた時、異様な光景が目の隅から飛び込んで来た。

 家のすぐ真上の空中に巨大な上部緑で下が黄灰色の長い胴体がとぐろを巻いていたのだ。
 それは回転していて、長い角が二本見えたかと思うと、巨大なワニのような口が見え、鋭く血走った目がじろりと俺を睨んだ。
 竜だ。
 たしかに竜巻(タツマキ)。
 しかし、あのガキどもめ、この場合、発音はリュウマキだろ。それならこちらの準備が変わったかも。
 俺は余計なことに腹を立ててたぶん時間を0.4秒損した。
 なにしろ竜はものすごい速さで俺をめがけて口を伸ばしてくる。
 俺に迫りながらワニのような口が大きく開いた。口の内側にずらりと並ぶ尖った牙は俺の腕ぐらいの太さがある。開いた上顎の牙と下顎の牙の距離は2メートルぐらいありそうだ。
 あんなので噛みつかれたら、一瞬に骨ごと砕かれて死ぬぞ。
 俺は死の恐怖が電気のように全身を走るのを感じた。
 逃げろ。
 そう言い聞かせたのに、体の反応が遅い。あまりの恐怖に力が抜けてしまってる。
 逃げろ、死ぬぞ。
 やっとのことで一歩踏み出した。
 だめだ、この調子では玄関に入る前に殺やられてしまう。
 俺は咄嗟にそばにあった娘の自転車を盾にして目をつぶって身構えた。
 ゴォグォーン。
 形容しがたい轟音が響いて腕に強烈な振動がきた。だが、痛みはない。牙は俺の体にまでは達していないようだ。
 目を開けると娘の自転車がつッかえ棒になって竜の上顎と下顎を開いたままにとどめている。
 俺は急いで竜の牙で閉じられかけているその空間から地面に転げ出た。
 そして這うように玄関ポーチに入る。
 ドアを開けたところには妻が立ち、携帯で竜を撮影していた。
 俺が振り返ると、竜は半ばで鉄骨の折れかかった自転車を吐き出して、身を翻して空に戻ってゆくところだ。
 妻の後ろから娘が顔を出して、ぼろぼろにされ竜の涎だらけの自転車を見つけ、指さして「あたちのお車~」と号泣し出した。
 
「なんだよ、聖美、俺が殺されそうだったのに、呑気に携帯なんか」
「でも女の私に助けられる筈ないでしょ」
「それは、まあそうだが」
「それより、今撮影した動画、きっと高く売れるわ。本物の竜の動画なんて世界初じゃない? あなたも自力で脱出できたんだし、よかったじゃない」
「俺の自力じゃないぜ」
「えっ?」
 俺は泣いてる娘の体を持ち上げた。
「ありがとう、聖羅、お前のキューティーフラッシャーがパパを守ってくれたんだ。
 自転車なんかママが動画を売ったお金ですぐに十台ぐらい買ってくれるってさ」
 俺は自分が生きてる喜びごと娘を抱きしめた。  めでたし、めでたし





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 ショックだった。人生初めての追試だ。

 木佐間亮は放課後残って、追試を受けるはめになった。
 科目はもちろん数学だ。
 クラスの三分の一ぐらいが教室に残った。
 とほほ、俺の数学の実力はクラスの三分の二未満ということだ。
 
 教師は入室すると出欠を取って言った。
「よし、じゃあ不要なものはしまって。
 携帯もしまえ。
 計算尺も電卓もだめ」
 田中が言った。
「電子翻訳機はいいすよね?」
 教師が却下する。
「何に使う。電子翻訳機もだめだ」
 真由美が聞く。
「DSはいいですよね? 行き詰ったらリラックスしたいです」
 教師が却下する。
「DSもだめだ」
「眼帯はいいすか?」
 川藤が訊くと、教師はそっけない。
「診断書のない眼帯、包帯もだめ」
 柴崎が冷やかす。
「お前の通魔眼を封じられたな」
「ああ、最後の希望だったのに」
 川藤は頭を抱えた。
「ペンダントはいいですよね、私はあのペンタグラムがないと魔法を使えないんです」
 おバカなさやかが渇望した。
「だめ!
 いいか、お前たち。
 今回は校長から簡単にしてやってくれと頼まれて、うんとやさしい問題にしてある。呪文も覚えられないお前らが魔法を使えなくても解けるような問題だ。
 じゃあテスト用紙を配るぞ」
 
 問題が伏せて配られて全員に行き渡ったところで、教師は言った。
「問題をよく読んで、解くように。わかったな。それでは始め」

 ひっくり返して亮は唸った。
 誰かも思わず「この問題はこの前の」と口走った。
 そうだ、この前の本テストと同じ問題だ。ただ答えが前回は空欄を埋めるものだったのが四択にやさしくなってる。
 たしかに正解確率はアップする。
 だが、教師は勘違いしている。
 これではこの前とレベルそのものが変わらないではないか。
 この前だめだったやつに、同じ問題を出したって、復習なんかほぼしないんだから何の救済にもならないじゃないか。

 亮はおぼろげな記憶を頼りに問題を計算し出した。

「問題をよく読めよ」 
 教師は歩き回りながら何度もそう言った。
「問題をよく読めよ」 
 教師は亮の前でも足を止めて繰り返した。
 亮はむっとして言った。
「すみません、気が散るので黙っててください」
 教師は「そうか」と言って静かになった。

 追試は終わった。

 亮はほっとした。
 なんとか赤点はクリアできたと思った。
 すると、他のやつらは意外なことを喋り合っていた。
「俺、もしかして人生初の百点満点かも」
「あ、あたしも。簡単だったよね」
「あれで百点取れないなんてバカだよな」
「百点以外は人間じゃないだろ」

 えっ、そこまで簡単じゃないだろ。
 亮が怪しんでいると、クラス一のバカと思われてる魔術狂いのさやかが訊いてきた。
「亮は必死になんかコツコツ書いてたね」
「いや、復習してなかったから計算するのにえらい時間がかかってさ」
「えっ」
 全員が亮のまわりに集まった。
「お前、人間以下決定!」
「こんなバカいないよね」
「いじめになるから死ねとは言わんが」
 全員が爆笑した。
「な、なんだってんだよ?」
 亮が泣きそうになるとバカな筈のさやかが教えてくれた。
「普通は問題文の最後に、正しいと思う番号に○をしなさい、てあるでしょ。
 だけど今日のテストは、その最後のところが、たとえば、正しい三番に○をしなさいって超親切に書いてあったじゃない。
 だから問題の最後に書いてある番号に○するだけでよかったんだよ。
 あれだけ先生が繰り返して問題をよく読めって言ってたのに、亮は問題の最後までよく読まずに正直に自力で解いてたんだね」
「そういや、あれ、亮か、問題よく読めって言ってる教師に黙ってろっとか言ってたの」

「あっ、あ゛あ゛あ゛あ゛ー」
 亮は頭を抱えて叫んだ。亮は文系に進みましたとさ。     了



ま、ここまではないだろうが、懐かしいw

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 梅雨の頃の土曜日、僕がベッドで惰眠をむさぼっていると妻が僕を揺り起こした。
「あなた、起きて」
「うううん、何だよ、土曜の午前はずっと寝てていい約束だろ」
「あなたにお客さんよ、若い女の子」
「なんだ、それ」
「あんた、まさか浮気したんじゃないでしょうね」
「じょっ、じょっ」
 僕は息が止まりそうだ。
「じょじょじょ、冗談でしょ、僕は世界一の」
「ふふ、皆まで言わずともよい。世界一の愛妻家でしょ、わかてるってば。
 とにかくあの変な女をとっとと叩き返して」 
 妻はそう言って僕が起き上がるのを嬉しそうに眺めた。僕はパジャマを着替えながら妻に聞こえないように呟いた。
 まったくわかってないな、愛妻家じゃなくて、世界一の恐妻家だぞ。
 
 玄関に出ると、パーツの全てが日本人形みたいに小さい顔立ちの女の子が頭を下げた。顔立ちに合わせたのか着物を着ている。
「なんですか?」
「初めまして、私は昨年の夏、貴方に瀕死の父を助けていただいた瀬美と申します」
「瀕死の父? なんか覚えがないんですが」
「いいえ、間違いありません。
 父は公園で寿命最期の半日を過ごしていて突風に煽られて道路に飛ばされたんです。しかし、もう元に戻る体力がなく観念したところを、たまたま自動人力車で通りかかった貴方にお助けいただき、公園の方に戻していただき、最後を安らかに終えられたんです。
 父は、ついてはきっとあの恩人を探し出し恩返しをするようにと自動人力車のナンバーを書きとめて遺書にしたためたのでございます」
「それってもしかして……まさか」
 僕の記憶は昨年の夏に飛んだ。

 会社の車で外回りをしていた僕はとある公園にさしかかった。
 陽射しが強く、数人の小学生が水飲みの蛇口を押さえて、噴き出した霧で小さな虹を描いて遊んでいた。
 僕は少しスピードを落として、ガキんちょどものさわやかな芸術作品を横目でちらりと見やり、また前を向いた。
 その時、数メートル前に黒っぽいゴミをみつけて、犬の糞だな、やだなと思い急ブレーキをかけた。
 なんとか間に合ったと思うけど、たぶんタイヤの手前ぎりぎりだろう。
 そう考えて僕は車を降りてタイヤの前を確認した。
 すると、そこに一匹のアブラゼミが羽を震わせて、それでも飛べずにいた。もう死期が近づいて飛ぶ体力がなくなっているのだろう。
 お前は運がいいぞ。
 僕はセミをそっと捕まえると、公園の雑草の中に置いてやった。

「あのセミか。
 でもなんで君はそんな格好なの? まるで人間だ」
「うふふ、追求なさらないでください。
 それより父の遺命によるご恩返し、受けてくださいますよね」
 そこで僕はそっと囁いた。
「うちね、奥さんがうるさいから、君は可愛いからなおさら無理かも」
 その時、噂の主が僕の背後に腕組みをして現れて、僕は凍りついた。
 妻は上から目線で聞く。
「あなた、その女、なんだって?」
 僕は語るも不思議なその事情を説明してやった。

「じゃあどういう恩返しができるの?」
 妻の問いかけに、お瀬美ちゃんは答えた。
「はい、お饅頭作りなら自信があります」
「シケてるわね。まあ、いいわ。
 あんたもこっちが恩返しを受けないと亡き親に顔が立たないんでしょ。
 早速、お饅頭作ってみせて」
 恩返しが甘いもの作りだったのが、妻の承認にプラスに作用したのだろう。
 お瀬美ちゃんはさっそく台所で持参したもち米を焚き、小豆を煮出した。
 砂糖を足した小豆がとろけて、甘い匂いが部屋に漂い出した。
「あの、空いてる部屋はありますか?
 お饅頭を丸めるところは見られたくないのです」
「おお、キターっ、恩返しにありがちな禁忌だ、盛り上がってきたね」
 僕は楽しくなってきた。
 妻は涎をすすりながら言う。
「玄関入ってすぐの部屋が空いてるわ」
「ちょっとお借りします」

 瀬美ちゃんは部屋にこもって三十分ほどで出てきた。手に抱えた大皿には饅頭がピラミッド形に積みあがっていた。
「じゃさっそくいただくわね」
 妻はひとつ口に運んでもぐもぐして呑み込むと叫んだ。
「美味しいっ! こんな美味しいお饅頭は初めて食べた、感動した!」
 そして次から次へとお饅頭を口に詰め込んだ。
 結局、僕がみっつ食べる間に妻は三十個ぐらいを食べ尽くした。
「あー、食った食った。
 おい、恩返し娘、これから毎日、いっぱいお饅頭を作ってくれる。私は前々から美味しいものをプロデュースしたいと思ってたんだ。お前にタダでお饅頭を作らせ、ネットで売ってぼろ儲けしたい。どうせ暇で来たんでしょ?」
「まあ、暇といえば暇ですが」
「よし、決まりね!」

 こうしてお瀬美作妻命名の饅頭「蝉の巣ころり」はネットでまたたく間にヒットし、農天市場調べの今週の人気お菓子第1位に躍り出た。

 作れば作るだけ売れる状況にもともと天狗系の妻の鼻に付け鼻が足されたようになったのは無理からぬところだった。
「もしかして私ってビルゲイツを抜けるかもね」
 妻の言葉に、会社をやめさせられて発送係にされていた僕は止めにかかる。
「物理的に無理だよ。今でもお瀬美ちゃんも僕も限界だ」
「そんなことないわよ、工夫すればいいのよ。そう機械化だわ。
 お瀬美ちゃんがどうやってお饅頭を丸めているかこっそり覗き見すればいい。
 そしてノウハウを機械化。
 ホーホホホホッ、これでビルゲイツに勝てるわ」
「いけないよ、覗いちゃダメって言われてるのに。
 覗いたら、出て行ってしまうんだ、それが恩返しの憲法だから」
「だから気づかれないようこっそり見ればいいのよ」
 妻は僕の止めるのも聞かず、鉛筆のように細い超小型CCDカメラという文明の利器を入手して、お瀬美ちゃんが饅頭を丸めてる部屋に通じる換気口にそっと差し込んだ。
 パソコンの画面をつけた僕はびっくりした。
 お瀬美ちゃんがあんこを団扇で扇ぐ中、宙に浮かぶ数十匹のセミたちがあんこにおしっこをかけているのだ。
「ヒッヒィーーー」
 毎日つまみ食いしていた妻は画面を指差して泡を吹いて倒れた。

 お瀬美ちゃんを覗いたことは思いがけない幸運をもたらした。
 妻はそのまま入院して離婚届を送ってきたのだ。
 こんなわけで、僕はお瀬美ちゃんと一緒になってお饅頭で成功している。子供たちにも恵まれた。見た目も人間と変わりないのだが、ひとつ違うところがある。妻と子供たちは一年に一回脱皮してつるつるの肌になるのだ。   めでたしめでたし。
 



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 宇宙飛行士の秋本唯夫は日本人で初めて月に降り立つことに成功して、無事に日本に凱旋した。
 記者会見の席では月の写真が後ろの壁一面に映し出され、机には月の砂と石を詰めた重箱とススキが飾られて、その背後に唯夫とJAXAの理事長が座ってインタビューが始まった。
 絵としてはお月見風な日本情緒溢れる演出である。

《月に第一歩を降ろした時の気分はいかがでした?》
「第一歩というより第二歩をついてですが、なんか浮いているみたいに思いました」
 フラッシュが一斉に瞬いて、テレビ中継画面には、激しい点滅に注意してくださいのテロップが流れる。
 唯夫は目を細めながら続けた。
「そしてすぐに、ああ、そうか、これが重力が6分の1の感覚なんだなあって気づいて、月に来たんだなあと感動しました」

《月で見た印象的な景色を教えてください》
「それは月の荒涼とした地平から地球が頭を出し、やがて黒い宇宙の背景に全容を現すシーンです。白い雲と青い海をまとった地球はどんな星よりも美しいと感じました。あんなに美しい姿をこの肉眼で見れて幸せです」
 フラッシュが一斉に焚かれる。納得の相槌で記者の頭が上下に動いた。

《昔、アポロが旗を立てた時、あれ、風に揺れてるんじゃねという話があったんですが、日の丸を立てた時に風はありましたか》
「風はないよ、そもそも空気がないんだから」
 唯夫は軽蔑の視線で質問者を見た。

《昔、アポロが写真撮影したら、宇宙飛行士のバイザーに一人余分に宇宙飛行士の姿が映り込んでましたが、月面で人間がもうひとり増えてることはありましたか?》
「んなこたあ、あるわけないだろ。どこのトンデモ厨だよ」
 唯夫は質問者を睨みつけた。警備員が質問者のそばに行き警告する。

《で、月のセットはどこのスタジオにあったんでしょうか?》
「お前なあ」
 唯夫が質問者を叱ろうとしたが、それより早く警備員が質問者にヘッドロックをかけてそのまま外に引きずり出した。

 司会者が《すみません、無資格の記者を排除しましたので続行します》と言った。

《すみません、重箱を傾けて月の砂と石をよく見せてもらえますか?》
 唯夫が重箱を記者側に傾けると、フラッシュが瞬きまくる。

《理事長は月の第一歩をご覧になってどんな気持ちでしたか?》
 するとJAXAの白髪の理事長がマイクを手で引き寄せた。
「私が生きてる、生きてるうちに、日本人が月に、うぅぁぁ……」
 感極まったというやつだろう、理事長は泣き出してしまった。

《それではこの辺で時間となりましたので終了させていただきます》
 こんな具合で記者会見はいまひとつ盛り上がりに欠けた。

 それからも唯夫はいくつものマスコミ取材やインタビューをこなさなければならなかった。
 唯夫が妻と娘息子を伴い故郷の実家を訪れたのは日本帰国から一週間も経っていた。
 
 父母と姉夫婦はご馳走を並べて、英雄となった息子を待っていてくれた。
「よくやったな」
 父に褒められて、唯夫は謙遜する。
「まあ、決められた手順を遂行しただけだよ」 
 娘息子は「じじ、ばば」と言って久しぶりに会った父母にまとわりつく。
「婆ちゃんは?」と唯夫は聞いた。
「うん、さっきこっちへ来いよって言ったら、今、観たいテレビがあるからって、まだ自分の部屋にいるんだよ」
「そうか」
  
 祖母はこたつでテレビの時代劇を見ていたが、唯夫が現れると珍しい者でも見るように声をかけてきたた。
「どちらさま?」
「唯夫だよ」
「ああ、唯夫だわ、大きくなったねえ」
 唯夫は誇らしげに言った。
「おばあちゃん、俺、月に行って来たよ」
「はあ、米撞きに行って来た?」
「いや、そうじゃなくて、空に浮かぶお月様まで行って来たんだ。
 記者会見とか見なかったの?」
「見たけどありゃあ嘘でしょ」
「嘘じゃないんだ、ほら、これを見てごらんよ」
 ここに来るタクシーの中でダウンジャケットを少しだけ裂いて取り出した白い羽毛の先を、唯夫は祖母に手渡して言った。
「これが月のウサギの毛だよ」
 祖母は目を急に見開いて、唯夫をしげしげと見詰めた。
「唯夫は偉いことしたんだねえ。子供ん時から大きくなったら月のウサギに会いに行くって言ってたよねえ。まさか本当に月に行くとはねえ」
「ああ、すごいだろ」
 唯夫はまだ幼稚園の頃、祖母から絵本を見せられて、将来、必ず月のウサギに会いに行くと祖母に約束していたのだった。
「やっぱり月にウサギはいたんだねえ」
「当たり前じゃないか、ウサギがいなきゃ誰が餅を撞くんだよ」
「偉いねえ」
 祖母は満足そうに唯夫の手を強く握り締めた。
 唯夫にとっても今回のミッションの中で一番満足した瞬間だった。      了




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gingak
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  • 銀河 径一郎
    (ケイイチロー・ギンガ)
    好きな言葉は『信じる』。
    飛べなくても頭が悪くても
    地球人も宇宙人だ(笑)

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