銀河径一郎 小説、物語の部屋

銀河径一郎による不思議な物語、怖い話、面白い小説、ファンタジーなど。

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ずっと吐き気が続いている。

口の中も腫れぼったい。

冷蔵庫から氷を出して口に入れると少しすっきりするけど、すぐ溶けてしまうので続かない。

この前のピンチの時は、意識も朦朧としてたせいで辛さを連続して感じることはなかったけど、今回は吐き気エンドレスで時々もどすから、精神的には今回の方が辛い。


キャッ!

私は不意に鼻血がこぼれるのに気付いた。

慌ててティッシュを鼻に詰め、トレーナーの胸についた染みを拭いた。


電話で看護士さんに言うと、様子を見に来てくれた。

目だけだしたものものしい白衣の看護士さんは私の様子を見てうなづいた。

「体中の粘膜が弱ってるから、鼻血も出やすいの。

止まったようだし、あまり心配しないでいいと思うよ。

他に痛いところとかある?」


「吐き気は続いてるけど、

痛みは、特にはないかな」


「吐き気止めは一応決められた量は入ってるけど、先生に聞いてみるね」


そう言って出て行った看護士さんからすぐに電話がかかってきた。


「面会の人が来てるよ」と言われて、面会の窓を見たら、なんと私服の看護士のリカさんだ。


「リカさん、どうしたの?」

窓越しに電話で話をすると、リカさんは嬉しそうに笑ってる。


「夜勤明けて帰ろうとしたらね、珍しい人に会ったの。こころちゃんへって手紙をもらったんだ」


そうか、面会は原則として家族しかできないので、手紙をリカさんが預かってきてくれたんだ。

その時、私の頭の中に、ヒロキさんの笑顔が輝いた。

この前、いきなり病院に来てサプライズなひとだから、今回だって、何も言わずに来てくれたのかもしれない。

そうだ、ヒロキさんに違いない!


「もしかして、ヒロキさん!」


私が言うと、リカさんが驚いた目になった。


「あ、ああ、こころちゃんの彼氏ね。

残念でした、今回は女の子からなのよ」


私はバツが悪くて、顔を火照らせた。


リカさんもさすがに症状のつらい私に突っ込みはせずに、手紙の主を明かしてくれる。

「ほら、前に隣のベッドだった翔子ちゃん」


私もうなづいて微笑んだ。

「ああ、翔子ちゃん。

また入院してきたの?」


「ううん、翔子ちゃんは、維持療法に移ったから通院だけなの。

それで外来に来たついでにナースセンターに顔見せたから、こころちゃんがもうすぐ骨髄移植なんだよって話したら、じゃあ、お手紙書くよって」


「そうか、順調なんだね」


「じゃあ翔子ちゃんからの手紙、読むね。


こころお姉ちゃん、覚えてますか?翔子です。

こころお姉ちゃんが骨髄移植を受けると聞いて、手紙を書いてます。

私は移植なしで薬だけでよくなれて、今は学校にも通っています。

少しだるいけど、毎日、元気です。

こころお姉ちゃんもきっと元気になって学校に通えるようになると私は信じています。

がんばってくださいね!

そうだ、こころお姉ちゃんのボーイフレンドの写真、まあまあなんて言ってごめんなさい。

ちょっとうらやましかったです!

早くラブラブデートできるといいね!」


リカさんが手紙をたたむと、私はお礼を言った。

「ありがとう、翔子ちゃんにお礼言っといて下さい」


(つづく)



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とうとう朝が来た。

もう逃げるわけにはいかない。

朝の面会時間になった途端、お母さんが入って来てくれて、ホッとした。


「先生も言ってたでしょ。

今回は前の治療より、さらに免疫力が落ちるんだから、クリーンルームの決まりをちゃんと守るのよ」

「わかってるって、うるさいな」

なんて、いつもと同じ口答えが妙に心地よかったりする。


「大変だろうけど、がんばってね」

「うん、心配しないで。私はお母さんの子だから頑張れるよ」

お母さんは目頭を押さえて後ろを向いた。


「私、美容室行ってくるね」

私はそう言って病院の中にある美容室に向かった。

今回は、枕元に落ちる髪を取るのも大変なので、抜ける前に髪を剃ってしまうのだ。



つるつる頭をバンダナで覆って病室に帰ると、ちょうど佐藤先生と看護士のアカネさんも来てて、母と一緒に迎えてくれた。


「準備万端だな」

「まあね」

「お、えらいな、余裕だね」

佐藤先生が言い、アカネさんがクリヤーホルダーに挟んだ書類を渡してくれる。

「じゃあ、これを持って放射線科に行って、帰りはそのまま、クリーンルーム病棟に行ってもうひとつの書類を渡してね」


「はい、行ってきます」


「頑張ってな」「頑張って」


みんなに励まされて、私は放射線科に向かった。


放射線は1時間かけて三日連続で受けることになる。


放射線は見えないから実感がわからないが、体は確実にだるくなった。


それからクリーンルームに入り、看護士さんからIVHから抗がん剤を点滴され、その副作用の吐き気を止める薬も投与される。


ところが、夕方には吐き気を通り越して、いきなりもどした。

さすがは強力な抗がん剤だ。

私の涙もいきなり溢れた。

話で聞いてはいたが、実際にそうなると、あんなに頑張ると決めていた気持ちがぐらついてくる。


こういう時は、ヒロキさんのメールが頼りだ。

ビニール袋越しに携帯のボタンを押して送信する。


《こころです、いよいよ骨髄移植前のきつい治療が始まりました。

さっきいきなり吐いて凹んでます》


《そうか、きつい治療が始まったんだね。

でも、こころちゃんは治るんだから、気持ちを強くもってね。

僕も愛するこころちゃんを応援しているよ!》


私は、この世の中にメールというものがあって、一番助かっている人間は自分に違いないと思った。


(つづく)



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UFO

 †††

 午後、松本剛史は一週間ぶりにサークル「UFO研究会」の部室に顔を出した。
 超際モノなサークルだが、青稲田大学はマンモス校のおかげで登録部員は50名を越えており、常に部室では部員たちがわいわいと喋っているのだが、その日は、どういうわけか、4年間留年中の外神田部長がたった一人で雑誌を整理していた。

「ちわーす、今日は静かですね?」
「ん?松本だっけ、昨日のニュース見なかったのか?」
 そういう部長の顔は二日酔いのアルコールが残っているようにも、疲れてやつれているようにも見える。
「なんすか?」
「昨日、携帯にメールもまわしたろう?」
「あ、いけね、昨日の午前に歯医者に行った時、携帯の電源落としたきりだ」
 思い出したように携帯の電源を入れる松本に、外神田部長は溜め息を吐いた。
「そりゃ、嫌なニュースを猶予されて、幸せもんだな」
「なんなんです?」
「大変なことが起きたんだ」
 外神田部長は手にした雑誌をダンボール箱に投げ入れると、松本の顔を覗きこんだ。
「お前さ、アメリカの予言者、オダ・イタ・コーリッジが今月には宇宙人が姿を現すって言ってたの、知ってる?」
「ああ、オダ・イタコさん、なんか言ってましたね」
「だから期待してたのに……」
「じゃあ、つまり、宇宙人が現れなかったってことですか?」
「ああ、最悪だよ」
 そう言って外神田部長はビデオモニターのスイッチを入れた。

 堅苦しいネクタイを締めたアナウンサーが真面目すぎる口調で、カメラ脇のプロジェクターから流れるニュース原稿を読んでいるようだ。
「アメリカでUFOを飛ばしていたのは私だという老人が現れました」
 画面にインタビューに答える白髪の白人男性が映し出された。
「この男性はネバダ州に住むジェイムス・スミスさん。
 1947年から銀色の円盤を飛ばしていたということです。仲間と編隊を組んでホワイトハウスの上空を飛んだこともあると話しています。
 証言の後、老人は取材陣の前で、実際に円盤を飛ばしてみせました」
 画面が野外に切り替わった。

 さっきの老人が、ログハウス前の草原に細長い五本の足で立っている銀色の円盤の底に潜り込むと、梯子を引き出して中に入ってゆく。
 やがて、底面が回転してずれると、円盤の構造は中心部を除いてすかすかとなり、大きなプロペラが姿を現し、甲高い金属音と共に回転しだした。
 回転が上がると、再びすかすかの空間は見えなくなり、円盤は浮上した。

 松本もこれにはがっかりした。
 もっと高度な文明のものすごい飛行原理に違いないと思っていたのが、ただのヘリコプターだったとは。
 しかし、それでは瞬間移動級のスピードが説明できないだろう。
 松本がそう思った矢先、円盤の外周に埋め込まれたロケットブースターらしきものが薄く火を吹いたのが見えた。
 円盤は一挙に移動した。
 しかし、外周も少し回転してるためか、一直線ではなく、停止するのに手間取って少し位置がきれいな直線上からぶれた。その動きがまたUFOっぽい。
 UFOはひとしきり、空をジグザクに飛んで見せると、発信地点に戻って着地した。
 円盤から降りてきた老人は親指を立てて笑った。

 外神田部長は吐き捨てるように言った。
「わかったろ?このサークルは消滅だ」
 はあー……
 松本も大きな溜め息を吐いた。
 

 †††
 
 老人がログハウスのバルコニーで新聞を読んでいると、近所の小学生の兄妹が歩いてやってきた。
 
「こんにちは、ジェイムスさん」
「いやあ、チャーリー、キャロル、学校は終わったのかい?」
「ええ、ジェイムスさん、またいろいろ教えてよ」
「いいとも」
 老人は兄妹をテーブルにつかせ、ミルクとクッキーをふるまった。

「それで、円盤はどうやって飛んでるの?」
 チャーリーがクッキーで宙に弧を描いて尋ねると、老人はうなづいた。
「この間、宇宙のあらゆる地点は固有の振動を持っていると教えたね」
「うん、波動で決まるんだね」
「だから円盤の外側に虚数波動の泡膜を張って、円盤の内側の振動を、行きたい地点の振動に同期すると、瞬間的にそこにしかいられない状態になって、移動するんだよ」
 チャーリーは頭をふった。
「難しくてわかんないよ」
 キャロルは老人を見つめて聞く。
「あのね、パパやママも一緒にテレビニュースを見たのに、ジェイムスさんの円盤はプロペラとロケットのインチキだって言うの。プロペラもロケットもついてないのに、どうしてプロペラなんて言うの?」
 老人は笑った。
「人間には『究極の恐れ』という仕組みがあるんだ。
 それは潜在意識にあって、例えば私の円盤などの未知なる受け入れがたいものを、すでにある受け入れやすい形に錯覚することで、ショックを避けるためなんだ」
「そうなの?」
「そうなんだ、全ての人間が同じように私たちを認識することはないだろう。
 だけど、素直で恐れを持たなくてもいいと悟った君たちには私の本当の姿が見える」
 キャロルはうなづいた。
「うん、ジェイムスさんはロズウェルのUFO博物館の人形そっくりだね」   了
 




ミステリーサークルはイギリスの老人の仕業だったという話がありましたが、UFOはどうですかね?


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いよいよ明日から放射線と強力な抗がん剤投与が始まり、クリーンルームでの生活になる。

そう思うと落ち着かなくて、深夜0時をまわっても眠れない。


《ヒロキさん、こんばんは。

遅い時間にごめんなさい。

明日からは今までで一番きつい治療をするので、なんか寝付けなくて困ってます》


すると、ヒロキさんからすぐにメールが来た。


《こんばんは。

明日から大変なんだね。

僕も応援してるから、くじけないでガンバロ、ファイト!》


ヒロキさんのメールにいつものように励まされたが、しかし、不安ばかりが思い浮かんで眠れそうにない。

ベッドから抜け出して、ナースステーションを覗くとリカさんがいた。


「リカさん」

「あ、こころちゃん、入っておいで」

リカさんに手招きされて、リカさんの向かいの席に座った。


「明日からクリーンルームだったね」


「うん、いよいよ白血病と決戦だよ」

私は強がって笑いをつくって見せた。

だけど、本当は頭の中で不安と恐怖がぐるぐる渦巻いている。


リカさんはうなづいて「そう、頼もしいね」


でも、リカさんの笑顔を見ているうちに、私の目からは涙がどんどん溢れてきた。


「ごめんなさい」


リカさんは立ち上がってハンカチを出して私の涙を拭ってくれた。


「大丈夫だよ、泣きたい時は泣いていいんだよ。

こころちゃんがあやまる理由なんてどこにもないんだよ」


私はうなづいたが、何も言えなくて、リカさんに抱きついて泣いた。

リカさんはやさしく私の肩を叩いてくれた。


「私が移植受けても、うまくいかない確率は半分近いでしょ。

そしたら、その後、私、死ぬかもね。

そしたら、痛い思いして骨髄をくれるお父さんにも申し訳ないよ」


リカさんは私の肩を強く揺さぶりながら言った。

「こころちゃん、確率なんてもっと悪くたって関係ないんだよ。

だって、こころちゃんは治るんだから。

治って、学校に戻って、彼氏とデートするんでしょ」


「……うん」


「そう、わかってれば大丈夫。

涙で不安を洗い流したら、悪い想像はおしまいだよ。

部屋に戻ったら、病気が治って、友達や彼氏と笑って楽しく話してる場面をイメージしながら眠ってごらん」


私は涙を拭って、今度は自然と笑顔になった。

「ありがと、リカさん。

なんだか勇気が湧いてきたよ」


私はリカさんに礼を言い、しばらく雑談して部屋に帰った。


(つづく)



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「向こうもね、こころが病気だから遠慮してるけど、

本当はこころのこと抱きたいはずだよ。

こころだって、そういう気持ちあるでしょ」


サトミにそう迫られると、うなづくしかない。

「それは、まあ、ないと言ったら嘘だけどさ。

でもヒロキさんはそういう軽いのじゃなくて、もっと大人の感じなんだよ」


カオリが聞き返す。

「大人の感じって?」


「だから、言葉でチャラチャラするんじゃなくて、目で合図してスーて奪うんだよ」


カオリとサトミは笑いをこらえて言った。


「へー?」「スーて奪うのかあ?」


そこへメールの着信があった。


《そうか、そういう気分もあるよね。

僕も、こころのこと、ディープなキスして抱きたいな》

私はまず自分だけで見ようとしたのに、いつの間にかサトミとカオリが後ろに回り込んで盗み見された。


「きゃー、やだー!」「言葉でチャラチャラしてるう!」

「違うんだってば」

私は、二人にさんざん冷やかされてしまった。

だけど、まるで学校にいるように私に接してくれることが私にはありがたかった。



二人が帰った頃、歯科に呼ばれた。

免疫が弱い状態では虫歯の菌も手強い敵になるので、すでに治療済みだが、最終チェックをするのだ。

歯科から戻ると、マルクでおなじみの処置室に行った。


佐藤先生が真剣な顔で言う。

「さあ、今日は侮れないIVHだけど、頑張ってね」


IVHというのは、腕の血管ばかりに点滴していると血管炎になるので、点滴専用口を体に差し込むと昨日母親と聞いている。


「侮れないって?」


「うん、かなり痛いかも」


「麻酔するって言ったよね?」


「マルクで知ってるだろう、麻酔しても痛いことがある。ごめんな」


麻酔をして、鎖骨の下に針を刺し、静脈を探る。そしてもう一度今度はパイプを同じように刺すのだ。

これが、予想外の痛さ。あのマルクに負けないくらい痛いかも。

私は力を込めて目をつぶった。


「ようし、つかまえた」

数分すると、佐藤先生が「はい、終わったよ」と言ったので、目を開くと鎖骨の下にパイプが縫い付けられていた。


「先生、なんだか痛みがあるし、違和感もあるよ」

私が言うと、佐藤先生は困った顔だ。

「うーん、少し痛みが残るかもね、我慢して慣れてくれるかな」


私は仕方なくうなづいた。


こうして骨髄移植に近づいてゆくんだなと思いながら、私はヒロキさんに誓った。

きっと治ってみせるよ!


(つづく)



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gingak
  • Author: gingak
  • 銀河 径一郎
    (ケイイチロー・ギンガ)
    好きな言葉は『信じる』。
    『地球人も宇宙人』。
    写真はッシェル・ポルナ
    レフの真似です

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