銀河径一郎 小説、物語の部屋

銀河径一郎による不思議な物語、怖い話、面白い小説、ファンタジーなど。

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 翔一がいつものように四時すぎに帰宅すると、母親が話しかけてきた。
「翔くん、宿題は?」
「当然やってきたよ。前にも言ったでしょ、僕は家庭に小学校の仕事を持ち込まない主義なんだから」
 母親は笑いをこらえながら「偉いわね」と褒めた。
「ところで翔くんさ、来週はクリスマスだよ」
「だね。コンビニではもうクリスマスソングが流れて浮かれてるよ、なんとかして関連商品を売ろうという根性がさもしいよ。情けない」
「ま、それはそうなんだけどさ、翔くんは何か欲しいプレゼントとかあるの?」
 母親は愛想笑いを浮かべて翔一の表情を窺ったが息子の反応は鈍い。
「クリスマスプレゼントねえ」
「実はさママのところにサンタクロースからアンケートが届いてるんだよね」
 翔一は喉までこみあげてくる言葉を呑み込むのに必死だった。

 僕はもう子供じゃないんだよ。どうして親ってそんな伝説を押し付けるわけ。僕はね、サンタクロースなんて実在しないってとっくに知ってるんだよ。いつもママが僕の希望を聞いてパパが買ってくるんだから。見え見えだよ。ほんとに信じ込ませたいならこのマンションに煙突つきの暖炉を作って僕の希望と違うものを置いといてくれなきゃ。
 しかし、こんなことママに言っちゃ実も蓋もないし、可哀想だしな。

 翔一は考えて思いついた物を答えた。
「僕ね、サンタのブーツがいいな」
 母親は聞き返した。
「サンタのブーツ? おもちゃのプレゼントはいらないの?」
「おもちゃはいらない。サンタのブーツがいいんだ」
 母親は感激して思わず息子の頭をハグした。
「ああ、私の育て方は間違ってなかったわ!」


st_boots

 クリスマスリースが飾られた日本中の子供のいる家庭にクリスマスの朝が来た。

 あちこちで小さな子供たちは興奮しながら起き出して望み通りのプレゼントを発見して歓喜していることだろう。
 そんな様子を見て親たちは『パパが買ってきたのにおばかね』『でも今が一番可愛いよなあ』なんて囁き合って喜んでいるのだ。
 翔一はそう思うとケッ、馬鹿バカしいと息を吐いて布団から頭を出し、枕元を見た。
 そして大きな箱を見つけると几帳面にセロテープを剥がしていった。

「な、何だよ、これ!」
 中身を見た翔一は怒りがアドレナリンとなって脳髄に噴き上げるのを感じた。
 それは大人用のブーツだ。しかも極寒仕様の分厚つくて重たい本物の革のブーツだ。
 母親と父親がわざとらしくドアから入って来て、何かに驚いたように母親が「どうしたの?」と声を上げた。
 翔一は怒鳴った。
「これじゃ本当のサンタのブーツだよ!」 
 母親が呟いた。
「どうしてサンタさんはブーツを貰ってくれなかったのかしら」
 翔一は「はあ?」と疑問符を思い切り跳ね上げた。
 父親はおかしな雲行きを察知して「いけね、会社に遅刻するから行ってくる」と逃げるように出かけた。
 翔一は枕元に書き置きがあるのを見つけた。
「僕はおもちゃは要りません。どうぞサンタさんはこのブーツを使ってください。サンタ思いの翔一より」
 もちろんそれは母親の書いた字だ。

「あんたって親はどうしてそこまでアホなの。僕はお菓子のいっぱい入ったサンタのブーツが欲しかったのに」
 翔一は子供のように、いや実際まだ子供なのだが、寝転んだまま足をばたばたさせて悔しがった。
「そうか、わかったわ」
 母親は毅然としてそう言い切るとサンタのブーツを検索して電話した。
「お宅は子供に夢を売るお菓子会社のくせに、どういうセンスをしてるんですか?
 サンタのブーツをプレゼントしたらサンタは裸足ですよ。この寒い中、サンタに裸足で帰れって言うんですか?
 おかげでうちの息子が誤解したじやないですか?」

 翔一は絶望的な気分で電話してる母親を眺めながら呟いた。
「誤解してるのはあんただけだよ」
 
 こんな家庭にもクリスマスの安らぎがありますように……  了
【“サンタのブーツ”の続きを読む】
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gingak
  • Author: gingak
  • 銀河 径一郎
    (ケイイチロー・ギンガ)
    好きな言葉は『信じる』。
    『地球人も宇宙人』。
    写真はッシェル・ポルナ
    レフの真似です

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