銀河径一郎 小説、物語の部屋

銀河径一郎による不思議な物語、怖い話、面白い小説、ファンタジーなど。

 トゥルルルと家の電話が鳴り響いた。
 今の時間、家には中学1年の兄光一と小学2年の弟翔しかいない。階段を駆け降りた二人がリビングに入り、光一が受話器を上げると、翔が反対側から耳を押し当てて来た。
「もしもし」
 光一が言うと聞こえて来たのはキンキンした甲高い声だ。あまり声が高くて音が割れてなんと言ってるのか聞き取れない。
 すると翔が囁いた。
「オレオレって言ってるんだよ、ほらヘリなんとかガスで」
 光一は「ヘリウムだろ」と囁き、もう一度耳を済ませてみた。

 そう言われると確かに甲高い声は「オレオレ、オレオレ」と言ってる気がする。
 オレオレ詐欺の電話がついに来たんだ。何人もの同級生からオレオレ詐欺の電話が来たぞと自慢され、お前んとこはまだかよと言われてた光一は嬉しくなった。
 相手はまだ「オレオレ、オレオレ」とだけ連呼してる。
 しかし、オレオレだけでは用件が足せないじゃないか。間抜けな犯人だ。
 光一はテーブルにそっと受話器を置くと、足音を忍ばせて廊下に出て玄関に下りた。翔もしっかりついて来て囁く。
「どうするの?」
「ホシはまだ近くにいる。行くぞ」
 光一は刑事ごっこモードで弟と玄関のドアから出た。

 通りに出ると光一は弟に聞く。
「怪しいやつはいないか?」
 すると翔は通りを見渡して、買い物の主婦ぐらいしか見つけられず報告する。
「ホシの姿は見えません」
「逃げられたか、お前はそっち、俺はこっちだ」
 光一が走り出すと、すぐその後を翔がついてくる。
「お前はあっちだ」
「お兄ちゃんと一緒がいい。ホシが拳銃持ってたら怖いもん」
「使えないデカだな。よしついて来い」
 
 二人は20分ほど走り続けて、道の両脇は造成だけされた更地になった。
「お兄ちゃん、疲れた、帰ろうよ」
「ホシを追ってるんだぞ」
「ホシはもういいよ。ただのオレオレ詐欺だよ」
「あの家具屋まで行くぞ」
 光一は二百メートル先の大きな建物を指差した。あそこは家具屋のくせに入り口を入ってすぐになぜかガチャポンが並んでいるのだ。
 昨日は朝のテレビの占いで「牡羊座絶好調」だったのにも拘らず、出すガチャポン、出すガチャポン、全て怪人か怪獣でヒーローが一個も出なかったのだ。
 だから仇を取らなければと光一は考えていたのだった。

 しかし、家具屋に辿り着いて、ガチャポンを回すとまたまた出てきたのは怪人、怪人、怪獣だ。光一はもう二度とこの店に来るものかと決心して捨て台詞を吐いた。
「荒れてやがる。帰るぞ」
 家具屋から出たところで、翔が「あっ、あれ」と声を上げた。
「どうした?」
 光一が翔の指差す方向を見遣ると、家具屋の広い駐車場の隅で白い鳥が嘴で地面を突いていた。
「お兄ちゃん、あれ、カラス?」
 鳥は弟より小さいがカラスよりは大きい。
「白いカラスがいるかよ。体もカラスより大きいぞ」
「じゃあ何?」
「ツルにしちゃ小さいから」
 翔はゆっくりと近寄り始め、光一も遅れてはならじと歩み寄った。
 すると白い鳥ははばたいて青い空に舞い上がった。
 大きく円を描いて高く舞う白い翼を、二人は目で追ってぐるぐるとその場で回転しながら、溜め息を吐いた。
「白い鳥、カッコイイね」
「ああ、あんな風に飛べたらいいよな」
 やがて白い鳥は小高い林を目指して飛び去った。 
 
「お兄ちゃん、地面に何か落ちてるよ。ゲーム機かな」
 弟はそう言って鳥のいた辺りの地面から土まみれの器械を拾い上げた。
「これ、お兄ちゃんの携帯電話じゃないの?」
 光一は翔から携帯を受け取って言った。
「あ、そうだ、じゃあ昨日自転車でここに来た時に落としたんだ」
「携帯を落としても気づかないなんて、お兄ちゃんボケてるう」
 翔はそう言って笑ったが、急に思いついて叫んだ。
「あ、もしかして今の鳥が家に電話したのかも、それならオレオレ詐欺じゃないね」
 そう言われて光一は発信履歴を見てびっくりした。まさについさっき家に電話してた記録があったのだ。その前の昨日の最後の発信も家あてだったから、きっとあの鳥は履歴ボタンを嘴で突いて家に電話して甲高い声で「オレオレ」と鳴いたのだろう。
「そうか。今の鳥、本当にオレオレサギだったんだな」
「え、鳥がオレオレ詐欺するの?」
「その詐欺じゃなくて鳥の種類がサギなんだよ」
 光一は弟に動物図鑑を見せてやろうと考えながら家に向かって駆け出した。  了




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gingak
  • Author: gingak
  • 銀河 径一郎
    (ケイイチロー・ギンガ)
    好きな言葉は『信じる』。
    飛べなくても頭が悪くても
    地球人も宇宙人だ(笑)

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