銀河径一郎 小説、物語の部屋

銀河径一郎による不思議な物語、怖い話、面白い小説、ファンタジーなど。

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 松本剛史は携帯の着メロに起こされた。
 その曲は不明の人間からの着信に割り当てた日本昔ばなしのテーマだ。
 携帯を開いて耳にあてると、やはり知らない人間の声だ。
「俺だ、外神田だ」
「だ、誰ですか?」
「俺を忘れたのか」
 松本は時計を眺めて、思い切り不機嫌に言う。
「なんだ夜中の2時じゃないすか、明日は朝から会社で会議なんですから、誰だか知らないけど勘弁してくださいよ」
「それどころじゃないぞ、今からアメリカの大統領が特別会見を行うんだ」
「関係ないすよ」
「いや、大ありだ、ETの存在についての公式会見だぞ」

 松本はハッとした。
 そういえば松本は青稲田大学で2年ほど「UFO研究会」というサークルに在籍していた。しかし、アメリカでUFOを飛ばしていた老人が名乗り出てサークルは消滅したのだった。その時の部長がたしか外神田という名前だった。

「UFO研究会の外神田さんですか! 懐かしいなあ、今、何してるんですか?」
「学生に決まってるだろう」
「ま、まだ学生? 俺より8歳年上なのに」
「当たり前だよ、真実はすぐそこにあるんだぞ。生活のしのぎのために仕事なんかしてられるか。今は超文明研究会を結成して活動してる」
 松本は1パーセントの尊敬と99パーセントの軽蔑を溜め息に込めて吐いた。
「はあ。それで公式会見って本当なんですか?」
「当たり前だ。じゃなきゃ電話するかよ」
「他のメンバーにも電話したんすか?」
「まあな、どいつもこいつもすぐ電話を切って薄情な奴らだ。すぐCNBBのリアルタイム動画をつけてみろ。まもなく演壇に大統領が現れるぞ」
 松本は仕方なくノートパソコンの電源を入れた。

 画面にFX取引のポジションが映っている。
 88円10銭時点でで10枚の買い持ちだ。現時点での相場は88円80銭前後。10銭で千円だから10枚で70銭利益なら、約7万円の儲けということになる。
 ブラウザのファイヤーダックスを開いてCNBBと打ち込み検索するとすぐにアメリカの情報テレビのホームページが見つかった。その片隅に小さな画面があって、星条旗が立てかけられた演壇が映し出されている。
「ところで松本、FXやってるなら売り持ちにしとけよ。いつもあの黒人大統領が出てくるとドル円は下がるからな」
「あ、買いなんすけど、万が一のストップを87円90銭に入れてるから大丈夫っす」
「じゃあ今すぐ利益確定してノーポジにしとけば」
 7万で手仕舞いか。悪くないけど、これからもっと上がるかもしれないし。
 松本は利益確定せずに中継画面に見入った。

 ◇

 会見場に拍手が沸きあがった。演壇に大統領が現れた。記者たちを見渡して微笑むと演説を始める。
「今日、我々は合衆国の歴史に新たな1ページを開くだろう。
 私はこれまで歴代の大統領が秘密にしてきたことについて、公式に明らかにすることを決断した」
 会見場がどよめいた。誰かが口に指を入れてピーと鳴らした。
「そうだ、諸君も知っての通り、ロスウェルで昔の政府が気球の落下だと発表した事件、あれは実は宇宙人の円盤が墜落したのだ」
 拍手と歓声が沸き起こった。
「そうなんだ。また冷戦時代、ホワイトハウスの上空に円盤が編隊で現れたのも本当だ。時の大統領は核戦争を避けるようにと宇宙人から警告されたのだ」
 拍手と歓声が沸き起こった。
「これまでにグレイとホワイトとオレンジとイエローという4種類の地球外宇宙人が確認されている。すべての友人を招きたかったのだが、現在、地球にいるのは1種類だけなので許してほしい。ではゲストをこちらへ」
 大統領は演壇の脇に下がり、自分の入って来た扉に向かって拍手した。
 記者たちも盛大な拍手でゲストを迎えようとした。

 ドアが開いて、赤いドレスの女性のような宇宙人が入って来た。
 松本はアッと叫んだ。あれはたしか日本の……。
 大統領が叫んだ。
「ジャパニーズファーストレディ、ミユキ! 彼女は実はイエローなんだよ」
 会見場がざわざわとして、引いていいるような気がする。
 演壇に美由紀夫人が上がった。
「私はこれまでも自分が宇宙人だと言ってきましたが、それは冗談としてでした。
 でも今日は正直にカミングアウトします。私はムービー星で生まれて地球にやって来たんです」
 そう言って美由紀夫人はうなづきながら会見場を見渡し、同意を求めた。それはヒラビー・クリキントンの得意なパフォーマンスだ。記者が仕方なく適当に拍手を返した。
「ええ、そうなの。ジェリー・クルーズと私はそこで恋人同士だったのよ。近いうちに彼と映画を撮ることに決まったわ。ありがとう」
 失笑と控えめなブーイングが漏れた。

 大統領が美由紀夫人と握手して再び演台についた。
「美しい宇宙人、美由紀夫人にもう一度拍手を。
 そう。今まさに我々はグレイとホワイトとオレンジとイエローという4種類の地球外宇宙人と友好的な関係を構築して、新しい時代に入る必要がある。各地に宇宙人のための案内所を作り、案内人を大量に採用し、そのおかげで雇用問題は解決するだろう」
 記者たちから歓声が上がった。
「新しい時代にはFRCのものではない政府による新しいドルが必要だ。地球人とグレイとホワイトとオレンジとイエローという4種類の地球外宇宙人の顔をデザインしたドル紙幣に切り替えることにした」
 記者たちは拍手喝采だ。
「交換の比率は旧ドル2に新ドル1だ。新しい紙幣には息子の発案でくじをつけることにした。当たれば百倍の賞金だ。楽しみにしてほしい」
 記者たちからブラボーと声が上がる。

 ◇ 

「なんだかな」
 松本は失望した。
「でも、大統領がロスウェルを認めたし、画期的だぞ。よかったな」
「あの夫人は普通に地球人でしょ」
「まあ、そこは仕方ない。でも言った通りだろ。
 つっ!見ろよ、とんでもねえ、ドル円相場が大暴落だぞ!」
 外神田が叫んだ。
「えっ」
 松本はFX取引のポジションを見て青くなった。

 現在の相場は1ドル44円80銭だ。
 松本はストップを87円90銭に入れてたのに、48円10銭で約定して、「証拠金が380万円不足してます。明日まで至急入金して下さい」との大きな赤い字の警告文が出ている。
 40円の差は1枚で40万だから、10枚で400万。請求が20万少ないのはもともと20万が口座にあったからだが。
「ぎゃあああああああああああ」
 松本の絶叫をよそに、外神田が言う。
「ま、冷静に考えてそうだよな、新ドルは旧ドルの半分なんだから、世界中の投資家が一斉に売るからストップなんてないに等しいわな。100枚売ってたおかげで4500万の利益だよ。へへへ。宇宙人様さまだよなあ。
 おっ、ニュースだ。日本は米国債を他国に先駆けて売り抜けに成功していたらしい。きっと美由紀夫人が直前に情報を教えてくれたんだな、やるな!
 松本も売っておけばよかったのに」
「そ、外神田さん、僕、もう寝ます」
 松本は電話を切って大きな溜め息を三度吐いて寝た。
 夢の中にも友好的な宇宙人が出てきてお金を巻き上げられた。   了




 これはフィクションであり、人物、団体は架空のものです。
 一応、年内にも大統領がETについての公式会見するのではと、とんでも民族の間では噂が飛んでるようですよ(笑)

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gingak
  • Author: gingak
  • 銀河 径一郎
    (ケイイチロー・ギンガ)
    好きな言葉は『信じる』。
    『地球人も宇宙人』。
    写真はッシェル・ポルナ
    レフの真似です

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