銀河径一郎 小説、物語の部屋

銀河径一郎による不思議な物語、怖い話、面白い小説、ファンタジーなど。

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 その日は文化の日だった。
 ランチを食べてホラー映画を観た後、僕と妻は文化に親しみを持つべく古本屋に立ち寄った。
 しかし「戦争と平和」も「カラマーゾフの兄弟」も「同時代ゲーム」も「羊をめぐる冒険」も「姑獲鳥の夏」も「灼眼のシャナ」も「図書館戦争」も途中で挫折した僕としては読みたい本などないのである。
 妻は推理ミステリーの小説が好きなので棚をあちこちと移動しながら物色していたが、なかなかいいものはなかったようである。
「今日は文化の日だし、来たのが遅かったかもね」
 妻のそう言う声に落胆が表れていた。そういえば棚はところどころ抜けて、本が隣によりかかっている。名の通った本は既に漁られてしまった後なのだろう。
「じゃあ帰るか?」
「うーん、もうちょっと」
 妻がそう言った時だった。

 僕らの後ろ、腰の高さから女の子の声がした。
「じゃあっ、あたしがぴったりのご本を探してあげるよ」
 振り返ると、つぶらな瞳の小学校低学年ぐらいの女の子がおもちゃの魔法スティックを抱いてにっこり微笑んでいた。ピンクのデザイントレーナーにピンクのスカートの女の子は、開いた口から覗く小さな白い歯も可愛らしい。
「ほんとに? じゃ、お願いしようかな」
 膝を折って子供目線に近づいた妻の嬉しそうな声に、彼女もひと目で女の子が気に入ったのだとわかる。
「いいわよ、任せて」
「ありがと、私は里子、お嬢ちゃんのお名前は?」
 妻が聞くと、女の子はピンクの星形の中にハートの絵がついた魔法スティックをくるりと回転させた。そして続いて、自分自身もその場で足を交差させてくるりと回転した。
「あたし、マジカル天使サーシャなの」
 僕と妻は目を合わせて微笑んだ。そして小声で囁きあう。
「この子可愛いね」
「うん、可愛いな」
 妻は普通の声に戻って言う。
「そうか、サーシャさん、可愛いお名前ね」
 妻が言うと、マジカル天使はふと目をつむった。そして魔法スティックを前後左右に振ったかと思うと、突然、妻の手を引っ張った。
「こっちよ」
 マジカル天使は妻を引っ張って走り、僕も後について行った。
 やがて図鑑のコーナーに立ち止まると、マジカル天使は魔法スティックを三回振った。
 そして、ある本の前でぴたりと魔法スティックを止めた。
「はい、お姉さんはこれ」
 妻が棚から引き出すと、その大判の本はフランス料理の指南書だ。パラパラとページをめくると写真も出ていてわかりやすそうではある。これで料理下手な妻が進歩してくれたらいいなと思ってると、マジカル天使は再び魔法スティックを前後左右に振った。
「おじさんはこっち」
 マジカル天使は今度は僕の手を取ったが、僕はクレームをつける。
「おじさんじゃなくてお兄さんだろ」
「いいから早く早く」
 マジカル天使は僕の手を引っ張って駆け出した。

 辿り着いた棚は古いCDのコーナーだ。
 マジカル天使は魔法スティックを三回振った。
 そして魔法スティックで一枚のCDを指した。
「おじさんはこれ」
 ケースを見るとアメリカのカントリー&ウエスタンのようだが、ミュージシャンも曲名も全く知らない。
 それでも可愛いマジカル天使が選んでくれたのだから、気に入らないCDでも一度は聞いてみようと思ってマジカル天使と手をつないでレジに向かった。
 妻は既にレジでお金を払って例のフランス料理入門を受け取るところだった。
 僕も金を払ってCDを受け取った。
「ありがとう、サーシャ」
「マジカル天使さん、またね」
 僕らが礼を言うと、マジカル天使はにっこり笑って魔法スティックで僕らを指してくるくるさせた。

 ◇

 スーパーに寄って家に帰ると、妻は夕食の用意を始め、僕は普段使ってないプレイヤーを引っ張り出してマジカル天使が選んでくれたCDをかけてみた。しかし、CDは回転してるにもかかわらずまったく音楽は流れて来ない。なんだよ、せっかくあの天使が選んでくれたのに壊れたCDか。ひどい店だな。ま、百円だし、被害はないに等しいが。
 僕はがっかりして剣道の試合をぼんやり眺めて時を過ごした。

 鍋物の夕食を終えると、妻は古本屋で出会った天使のことを話題に上らせた。
「あの子、可愛かったよね、自分でくるっと回ってさ、超可愛かった」
「ああ」
「ああゆう子供欲しいねえ」
 妻の攻撃を僕は「うん、まあね」と流して反撃する。
「それよりフランス料理、期待していいんだろね?」
 妻はブッと噴き出しそうになった。
「フランス料理なんか無理よ。ああいうものはね、たまにお店で食べるから美味しいの。自分で作って失敗したら食べられない上に材料費がムダになるのよ」
 僕はがっかりした。
「なんだ、作る気ないならあの本を買うなよ」
「だって、あんな可愛い子が選んでくれたら買わない訳にいかないっしょ」
「まあな」
「だから今夜は子供つくろ!」
 僕は妻の今晩子作り宣言にたじたじとして抗議した。
「あっ、明日は朝から会議だし、俺は虚弱体質なんだぞ」
 
 それから風呂から上がると僕はパソコンタイムに入り、妻は仕方なくフランス料理の本を読み出したようだった。
 真夜中に近づきパソコンタイムを終えた僕が寝室に入り、ベッドに横たわると妻は言った。
「フランス料理、ひとつぐらいチャレンジしてみるわ」
 僕は驚いた。
「その変わりっぷり、どしたの?」
「えへへ、実はね、あのフランス料理入門、最後のページに帯が入っててさ」
「うん」
「それを開いたらなんと一万円札が出て来たの」
「えっ、すごいなあ、さすが天使だね」
 僕はにやにやしながら言って、エッチモードで妻のパジャマを脱がしにかかった。
「あなたこそ、どうしたの?」
「う、うん、お前が料理頑張るなら俺も子作り頑張るよ、ギブアンドテイクだ」
「なんかよくわかんないけど、そういうことなら」
 妻はそう言って目を閉じ唇を突き出した。
 
 あのCDを念のためパソコンで再生してみたら、僕の興奮ツボぴったりのどスケベDVDだったのである。素晴らしい天使である。   めでたしめでたし




えー、フランス料理入門の本か、カントリー&ウエスタンのCDを探しております(笑)

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gingak
  • Author: gingak
  • 銀河 径一郎
    (ケイイチロー・ギンガ)
    好きな言葉は『信じる』。
    飛べなくても頭が悪くても
    地球人も宇宙人だ(笑)

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