銀河径一郎 小説、物語の部屋

銀河径一郎による不思議な物語、怖い話、面白い小説、ファンタジーなど。

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 俺は、毎朝、よくすれ違う女に興味を持った。

 女はスーツにスカートという格好で、プラダかヴィトンのトートバッグを肩にかけて早足で歩いてくる。
 髪はロングで時々、コームで後ろをアップしてる時もある。
 初めて俺と目が合った時は、一瞬、女は微笑んだように見えた。
 もちろん、そう思ったのは俺の一方的な勘違いである可能性も高いわけだが、それ以来、すれ違うたびに、勤め先へ急ぐ女の瞳に、一瞬、私に向けた微笑が見えるような気がしてならないのだ。

 しかし、もとより話し下手の俺は女に声もかけられず、ただすれ違うだけだ。
 そもそも、こんな忙しい時間帯に恋の告白とかおかしいだろ、普通。
 さらに、こんな時間に寄り道してる俺って、まともな恋愛対象ではないよね。
 だが俺の恋心と思い込みは勝手に持続強化されてしまうものなのだ。

 時間帯は朝といっても、通学ラッシュの終わった後だから、女の勤め先は10時始まりの横文字の会社かもしれない。
 俺はなんとか女の住まいを割り出せないかと考えた。
 そして前日より手前ですれ違えるように時間と地点をずらしてゆくことで、数日後には女がマンションから出てくる後ろ姿を見つけた。

 ふふっ。

 俺は電柱に身を隠したまま、下品な笑みを浮かべ、仕事に急ぐ女の後ろ姿を見送った。
 俺は、その女の単身者向けマンションをぐるりとひとまわりすると、一階のひと部屋が無用心にもサッシが5センチほど開けっ放しのままなのを見つけた。

 俺は一階のバルコニーの手すりによじのぼり、サッシの間隙から部屋に忍び込む。
 瞬間、アロマテラピーの香水の匂いがした。
 見渡すと床には女が持ってたプラダのトートバッグがあり、テーブルには女が昨日していたルビーのアクセントがついたコーム型の髪留めがあった。

 なんて運がいいんだ。いきなり当たりのようだ。
 どういう風の吹きまわしか知らないが、神さまも俺に味方してくれたらしい。

 俺は全裸で女のベッドに寝そべってみる。
 今の気温ならいくらでも昼寝できそうな心地よい堅さと温もりだ。 
 ふと枕元で彼女の髪を見つけた。
 ダークブラウンに染めている髪だ。
 続いて枕もとのくずかごをひっくり返してみる。
 マスカラをふき取ったコットンやら、コンビニのレシートやら、まるめたティッシュやらが床に広がった。
 俺は紙くずに埋もれていたアイスクリームの小さなカップを見つけた。
 カップの底には溶けたアイスがバニラクリームとなって残ってる。
 俺はその溶けたバニラクリームを舐めて、至福の時を味わった。
 へへへっ、うまい。
 それから俺は眠くなって、全裸のまま眠り込んでしまったらしい。


 ガチャリ、ゴトゴトと玄関で音がしたが、俺は夢うつつだった。

「キャー」
 女は大声を上げた。

 俺は頭だけ持ち上げて女を見た。
 しかし、俺の体はまだ寝ぼけてるために動けない。
「どうして、ここだってわかったの?」
 女は言いながらバッグを床に放り投げた。

 そして、女は駆け寄ってきた。
 気は焦りながら俺は身動きできない。
 女は突然、俺を両手で持ち上げ、抱き締めた。
「きゃあ、可愛いーっ!
 前からお前のこと気になってたんだよ」
 女は俺の頭を撫でて、肉球をモミモミする。
 うわっ、そこ、だめ、こそばゆいって。
「わー、プニプニだ」
 だめだっつーの。
「プニプニ~」
 俺はちょっと怒って「ニャー」と鳴いた。
「ほんとはだめだけど、飼ってあげるよ。
 お前が勝手に部屋に入って来たんだから仕方ないよね?」
 女は誰かに弁解しながら、俺の口に自分の鼻の頭をくっつけ、それからキスした。
 
 へへっ、女からキスするとは大胆なやつ。
 ま、俺の場合、なぜか、こうしてくる女、多いんだけどね。

 女は猛ダッシュでコンビニに行き、キャットフードを買って戻ってきた。
「はい、お食べ」
 うほほーい、人間用缶詰よりうまい最高級猫缶プレミアムだぜ。
 俺はムシャムシャと猫缶をたいらげ、満腹になって、女の膝で首を撫でられながら、うとうとしだした。 

 へへへっ、この町内でも愛人ゲットだな。
 俺ってストーカーしても、結局、モテるんだよね。
 あれッ、なんだろ、今、人間のオタク野郎の羨望の眼差しを感じた。
 きれいなシャム猫に生まれてよかったよ~。       了

 


 
銀「総理は、猫と作者のこの格差にいかなる対策を取るつもりだ、答えてみろ!」
鳩「最高級猫缶プレミアムを支給します」
銀「そこの格差じゃなくてよお~」(^_^;

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gingak
  • Author: gingak
  • 銀河 径一郎
    (ケイイチロー・ギンガ)
    好きな言葉は『信じる』。
    『地球人も宇宙人』。
    写真はッシェル・ポルナ
    レフの真似です

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