銀河径一郎 小説、物語の部屋

銀河径一郎による不思議な物語、怖い話、面白い小説、ファンタジーなど。

この夏の甲子園決勝戦で、日本文理は日本中に熱い感動を与えてくれた。

久々も過去優勝6回の古豪中京大中京相手に、ベスト4すら初めての新潟県(私の出身)勢の日本文理。
そもそも新潟県勢の夏大会の勝敗は16勝48敗で全国最下位!(見事すぎる(^_^;)
新潟県勢の決勝進出があるとすれば、それは新潟出身水島新司の描くマンガの中だけだろうと新潟県民の殆どがほぼ信じていた。
そんな新潟では野球留学で来てくれる選手も殆どいない。
全国レベルから見れば、傑出した選手がいるわけでもない。
ごくありふれたチームなのだ。
当然、試合の前から勝敗は中京に有利に思えた。

しかし、日本文理は、小学校からのバッテリー伊藤と若林の冷静な配球が光った。
強打者の内角は当たれば一気に長打の危険があるから、なるべく避けて投球を組み立てるのが普通だ。まして速球の威力が抜けているピッチャーでもない。
しかし、このバッテリーは物怖じすることもなく、むしろ、そろそろ、そこに投げておかないと気持ち悪いだろうとでもいいたげに内角も攻める。
打者が見逃さずに強打ヒットしても、バッテリーに動揺はないようだ。
まさかあの球は打たれるのも覚悟して、次の打者を惑わすために投げたのではと思わせるぐらい、淡々と次の打者に向かい、後続を切って取る。
また打者により極端に配球を変える頭脳的な投球も有効だった。

監督も監督である。
高校野球といえば、出塁すればバントで走者を進めるのが常識。
しかし、大井監督は1球バントを試みると、次はもうヒッティングオンリーである。
最初のバントは守備をひきつけるための囮のような気がしてくる。
後はのびのびと振り切る。
だから見ていて爽快なのだ。
塁を進めるため自分は犠牲になるという発想のいやらしさは、1点を重んじるプロならともかく、高校生にやられると妙に気持ち悪いものだ。
それを大井監督は見事に打ち破ってくれた。

とはいうもの、相手は名だたる強豪を下して決勝に駒を進めてきた古豪である。
6回の痛恨の守備エラーが響いて、日本文理は6点の大差をつけられ9回の攻撃についた。

9回最初の打者キャッチャー若林は見逃しの三振。
二番手の打者主将中村はショートゴロに倒れた。
もうひとつアウトを取られたら即試合終了である。
そこで、あきらめムードが急速に伝染しているはずだった。

しかし、この時、誰にも気づかれず、軍神毘沙門天が球場に降臨したのかもしれない。
そこから上杉謙信の車懸りの陣を髣髴とさせる連続攻撃が始まるのである。
なにしろここからアウトはひとつも許せないのだ。



そして9回2死走者なしから、19分間の奇跡が始まった。

三番手の打者切手は2ストライクに追い詰められる。
あと1ストライクで試合終了だ。
しかし、切手はボールに手を出さずに四球を選び、出塁。

四番手は肉離れで足を傷めていながら、そのそぶりも見せない高橋隼だが、2ストライクに追い詰められる。
あと1ストライクで試合終了だ。
しかし、高橋隼はファールで粘ったあげく見事センターに打ち返し2塁打、1点を返す。

五番手は武石、2ストライクに追い詰められる。
あと1ストライクで試合終了だ。
しかし、武石は粘りに粘って7球目を見事に3塁打し、さらに1点を返し、4点差。

六番手は吉田、2球目をファールグラウンドに高く打ち上げてしまう。
ここぞと捕手、三塁手が走り込む。
これが補られたら試合終了ということで日本文理応援席から悲鳴が上がる。

万事休す、そう思われた時、毘沙門天の放った炎矢が白球を貫いたのか。
三塁手はボールを見失い、次の瞬間、ボールは突然、離れた地面に落ち、大歓声が沸きあがる。
まさか、何か、見えないものが日本文理に味方している。
多くの観客がそう感じたかもしれない。
投手堂林が動揺して、デッドボールを与え吉田は出塁。
たまらず中京は投手を森本に交替。

七番手は高橋義、2ストライクに追い詰められる。
あと1ストライクで試合終了だ。
しかし、高橋義もカットで粘って四球を選び、出塁し、満塁。

八番手はここまで大会を一人で投げ抜いてきた伊藤。
ホームランが出れば一気に同点に並び、試合が振り出しに戻る場面。
甲子園でも6点大差負けから同点に並ぶということは滅多にない。
ましてや、今は、決勝戦の9回である。

伊藤が打席に向かうと日本文理側アルプス応援席中心に「伊藤」コールの大歓声が上がる。
感激で伊藤は思わず目が潤んでしまうが、打席に集中する。
投手森本は慎重にボールで攻める。
すると「伊藤」コールが内野スタンドにも伝染し大きくなってくる。
投手森本は次の球もボールを放る。
どんどん「伊藤」コールが大きくなってグラウンドに降り注ぐ。
3球目、伊藤のバットは見事に三遊間をゴロで抜く。
1点返し、2点目はホームへの返球コースがよく、きわどいタッチプレーになったが、走者吉田は捕手をかわし、手でホームベースにタッチし加点、2点差に詰めた。
期待に応えた伊藤にやんやの喝采が送られる。

九番手に監督は控え捕手の石塚を代打に送る。
石塚は今大会三振ひとつと結果が出てなかった。
ところがである。
石塚は冷静に「初球はきっと打ち気をそらす筈」と読みきり、待っていた変化球をためらうことなく鋭く振り切った。
打球はレフトに転がり、石塚は一生分のガッツポーズを見せる。
1点を返し、あと1点差に詰め寄った。
素晴らしい執念にスタンドがいよいよ盛り上がる。

9回2死、6点の大差負けから始まり、あと1点で同点に並ぶ。
まさかと思ったが、そんな奇跡がここで起きるのか!
日本文理の怒涛の反撃に、スタンドは異様な熱気で包まれていた。

十番手は打者一巡して若林。
2球目を鋭く打ち返した。
鋭い音に、ライナーが奇跡を成就するかと思えた。
しかし、三塁手は打球の正面に立っていた。打球はあっという間にグラブに吸い込まれ、試合終了のサイレンが鳴った。

軍神毘沙門天も満足しただろう。
スタンドを埋めた観客が立ち上がり、大きな拍手が沸き起こる。
敗れた日本文理ナインには清々しい笑顔が溢れていた。

大会前はノーマークだった日本文理ナインが、日本中に忘れかけていた本当の野球の面白さを見せてくれたのだ。
配球は大胆に、バントなんてこそこそせずに、粘り、つなぎ、思い切り振り切る。
これならまずやってる選手が楽しい筈だ。
だから観ているこっちまで楽しくなる。
そんな永遠に記憶に残る、爽快な甲子園だった。

動画サイトで中京大中京VS日本文理 9回表のものを見つけた。
もう結果はすべて知っているのに、また見返しても興奮と感動が蘇ってしまう。
それは、人智を超えた奇跡に対する、みんなの期待が満ちているからだ。

当初のリンクは削除されたので別ものを






地元バカと思われるかと記事は遠慮してたが、やはり書かずにいられなかった(^_^;
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gingak
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    (ケイイチロー・ギンガ)
    好きな言葉は『信じる』。
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