銀河径一郎 小説、物語の部屋

銀河径一郎による不思議な物語、怖い話、面白い小説、ファンタジーなど。

この話はia. さんが募集していた??《パクられ話》??に、つい乗ってしまった小話。
オリジナルはこちら まるだし 
最初の2行と最後の1行をいただきました。
  



「おい、見ろよ! オッキーナって、Gカップだってよ」
「ほんとかよ」

 マンガ週刊誌のグラビアを覗いてる酔っ払いの会社員二人組は、鼻の穴をふくらませて、よだれでも垂らしそうな勢いだ。
 バカ、まるだしって、あんたらのことよ!
 周囲の女たちが冷ややかな視線を送った。

 都心から郊外へ向かう夜遅い通勤快速電車は、大きな乗換駅を過ぎて、座ってるのと立っている人数が同じぐらいなった。男女比も半々というところ。

 酔っ払いの向かいの席にかけていたOL風の二人が話し出した。
「知ってた? あの加納姉妹も、元はCカップだったって?」
 ボブヘアーの言葉に、セミロングがうなづいた。
「あ、やっぱりぃ、絶対に作り物っぽいもんね」
 そうそう、とまわりにいた女たちも顎を動かさずにうなづいた。
 単純に悔しいのである。
 そして、あんなニセパイにコロリと騙されるマスコミと男たちに腹が立つのである。

「その整形手術ってのが画期的らしいよ、ホームページ見つけたんだ」
「そうなの」
「ほら、普通、シリコンとか入れちゃうと完全な異物だから害が出たりするわけでしょ。けど、そこのは、画期的な新素材でさ、自分の脂肪を……」
 ここで、まわりの女の耳が徐々にダンボになった。

 突然、大きな声で例の酔っ払い会社員二人組がオッキーナのCMに流れる「スキっとさわやか~」を歌いはじめた。

 チッ!
 整形の話が聞き取れなくなり、立っていた一人の女が舌打ちし、酔っ払い二人組を睨みつけて「うるさいわね!」と鋭く怒鳴った。
 と、まわりにいたダンボな女たちも手を動かさずに拍手する。
 酔っ払い二人組は急に黙り込みうつむいた。

 で、話の続きにダンボたちが向かう。
「だから新素材が自分の脂肪を吸って同化するわけ」
「へえ、すごいねえ」
 ダンボの女たちも顎を動かさずにうなづく。

「だから体に害がなくて、お腹まわりの余分な脂肪が吸収されて、へこむべきところがくびれて、胸が膨らんで一石二鳥らしいの」

 ダンボたちはそれぞれ、つり革ふたつにオランウータンのようにつかまってるオヤジやら、なぜか白手袋で文庫本を隠すようにして立ち読み中の公務員風やらを押しのけて、会話してる二人に五十センチずつ、近づいた。

「私もちょっとやってみようかと考えてるんだ。
 ワンカップでも…。ううん、ぜいたく言わないから、胸が3センチでも大きくなって、ウェストが2センチでも小さくなったら嬉しいじゃない?」
 ダンボの女たちの何人かは思わず顎を動かしてうなづいた。

「でも、高いんでしょう?」
 セミロングの問いにシンクロして、ダンボの女たちも黙って聞き返した。

「それがさ、加納姉妹の頃はすごく高かったらしいけど、今は新素材がうんと値下がりしたとかで案外安いのよ」
「ほんと?」
「うん、月々7千円で48回払いが可能なんだって。
 なんとかできそうじゃない」
「へー、そんなに安いの!
 教えてよ、そこのアドレス」
「うん、いいよ、一人だと心細いから誰か誘いたかったの。
 いい?言うよ、HTTP://WWW.BEAUTY……」

 と、タイミング悪く、酔っ払い二人組が大きな声でまたオッキーナのCMを歌いだす。
「キスして、さわやか~」
 肝心のアドレスが聞き取れなくなり、さっきのプッツン女が、酔っ払い二人組に「警察呼ぶわよ!」と脅し、黙らせた。
 と、ダンボたちもすかさず心の中で拍手。

 しかし、静かになってみると、無情にもセミロングの「わかった、ありがと」という声が響き、ボブのコはアドレスを言い終えてしまっていた。

 ダンボたちはがっかりした。
 まだ黄金のトラの大口開けたプリントシャツを着ている人種ではないので、赤の他人のダンボたちが突然、話題に割り込むのは難しかった。

 すると、そこへ、セミロングが、
「念のため復唱するね、HTTP://WWW.BEAUTYCLINIC…」

 セミロングよ、お前はそつがない、いい女だ!
 私が男だったらお前を嫁にしたい!
 ダンボたちは無言でセミロングを誉めそやし、すかさずアドレスを暗記し、さりげなく携帯メールを確かめるふりをして打ち込んだ。

「それで、いつ、クリニックに相談しに行くの?」
 セミロングが訊ねると、ボブは逆に訊き返した。
「今、何時何分?」
「え、えっとね、0時12分だよ、それが何か」
「日付が変わって、今日は何の日、フッフー↑」
 ボブの顔が妙にニヤニヤしているのを訝りながら、セミロングが答え始める。
「4月ついたっ、
 えっ、エイプリルフール!?
 やだー、やられたー!」
「エヘヘ、今年は私の勝ちだよ!」
「会社で予定チェックしながら『明日はリカコに注意しなきゃ』と思ってたのに~、
 うっかりしてたよ~」
 騙されても和気藹々とボブと喋り合うセミロングは小田茜似のおっとりさわやかキャラである。

 収まりがつかないのは、いつのまにかボブに近づいてアドレスまで打ち込んでいたダンボたちである。
 プッツン女はドンと床を踏み鳴らし周囲を驚かせ、隣の車両へと移って行った。
 他のダンボたちもじわりと距離を戻しながら、そっと携帯のアドレスを消した。
 しかし、その指は悔しさで震えていた。
 もしかして、私も…、

 バカ、まるだし。
  



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gingak
  • Author: gingak
  • 銀河 径一郎
    (ケイイチロー・ギンガ)
    好きな言葉は『信じる』。
    飛べなくても頭が悪くても
    地球人も宇宙人だ(笑)

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