銀河径一郎 小説、物語の部屋

銀河径一郎による不思議な物語、怖い話、面白い小説、ファンタジーなど。

骨髄移植して1週間がすぎた。

放射線も抗がん剤もなくなったけど、体調はまだよくない。

体の中のあちこちが傷ついていて、それがニキビや鼻血や口内炎や下痢としてあらわれてくるのだ。


昼過ぎ、佐藤先生が来てくれてマスクごしに声をかけてくれる。

「よお、調子はどうだ?」

「まあまあ。

白血球はいくつ?」

「WBCは100、まだだな」


先生の答えに私はため息を吐いて落ち込む。

この数字が上がってくれば、お父さんから貰った骨髄が活動し始めたということなのだ。


「そんなにしょげるなって」


「しょげてないよ」

私は強がりを口にしてみた。


「数字が上がるまで、早くてももう1週間ぐらいかかると思うよ。

3週、4週かかることもあるしな。

グランも始めたし、じっと待つのがつらいかもしれないけど、お父さんの骨髄が強い血を造ってくれると信じてがんばろうや」


「そうだよね、お父さんの骨髄はきっと強い血を造ってくれるよね。

私は絶対に治ってみせる!」


「その意気だ!

こころちゃんのせりふを聞いて安心したよ」



翌週の木曜日に、白血球数がピョンと400に上がった。

お父さんの骨髄が私の体の中で働いてくれた。

まだ、普通の人より少ない数字だけど、お父さんからもらった骨髄が生きていることに、私は感動した。

お父さんに、めったにしないメールを送った。

《ヤッタよー、白血球数が400に上がったの!

お父さんからもらった骨髄が働き出したの!

お父さん、ありがとう!》


お父さんから20分ぐらいして返事がきた。

《そうか よかツタナ》



骨髄移植から3ヶ月目、私はついに退院の時を迎えた。

退院してもまだ1年とかは通院して薬を飲んで治療を続けなればならないだろうけど、通院以外はほぼ普通の生活ができる。



母と一緒に、ナースセンターに挨拶に行くと、看護士さんたちが総出で廊下に出てきて拍手してくれた。

「おめでとう!」「よかったね!」「がんばったもんね!」

婦長さん、アカネさん、リカさんに声をかけられて、私は泣く気はなかったのに、思わず涙をこぼしながら、でも笑っていた。

「みなさん、ありがとうございます!

私が退院までこれたのは、みなさんの暖かい看護のおかげです!

ありがとうございます!」

私がお辞儀して、立ち去ろうとすると、後ろから「まだ忘れ物があるだろう」と声がかかった。佐藤先生の声!

私が振り向くと、佐藤先生が走ってきた。

「完治はこれからだけど、退院するんだから、僕と看護士たちに見せておくものがあるだろう!卓球部!」


私は「あ、はい」とうなづいて、みんなに向かってスマッシュのフォームをしてみせた。

そして拳を胸の前で握りしめて大きな声で叫んだ。

「サー!」

それはここまで病気に勝った、そしてこれからも病気に勝つ、私の雄叫びだ。


廊下に拍手と、佐藤先生の「サー」返しが響いた。



(つづく)



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gingak
  • Author: gingak
  • 銀河 径一郎
    (ケイイチロー・ギンガ)
    好きな言葉は『信じる』。
    飛べなくても頭が悪くても
    地球人も宇宙人だ(笑)

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