銀河径一郎 小説、物語の部屋

銀河径一郎による不思議な物語、怖い話、面白い小説、ファンタジーなど。

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UFO

 †††

 午後、松本剛史は一週間ぶりにサークル「UFO研究会」の部室に顔を出した。
 超際モノなサークルだが、青稲田大学はマンモス校のおかげで登録部員は50名を越えており、常に部室では部員たちがわいわいと喋っているのだが、その日は、どういうわけか、4年間留年中の外神田部長がたった一人で雑誌を整理していた。

「ちわーす、今日は静かですね?」
「ん?松本だっけ、昨日のニュース見なかったのか?」
 そういう部長の顔は二日酔いのアルコールが残っているようにも、疲れてやつれているようにも見える。
「なんすか?」
「昨日、携帯にメールもまわしたろう?」
「あ、いけね、昨日の午前に歯医者に行った時、携帯の電源落としたきりだ」
 思い出したように携帯の電源を入れる松本に、外神田部長は溜め息を吐いた。
「そりゃ、嫌なニュースを猶予されて、幸せもんだな」
「なんなんです?」
「大変なことが起きたんだ」
 外神田部長は手にした雑誌をダンボール箱に投げ入れると、松本の顔を覗きこんだ。
「お前さ、アメリカの予言者、オダ・イタ・コーリッジが今月には宇宙人が姿を現すって言ってたの、知ってる?」
「ああ、オダ・イタコさん、なんか言ってましたね」
「だから期待してたのに……」
「じゃあ、つまり、宇宙人が現れなかったってことですか?」
「ああ、最悪だよ」
 そう言って外神田部長はビデオモニターのスイッチを入れた。

 堅苦しいネクタイを締めたアナウンサーが真面目すぎる口調で、カメラ脇のプロジェクターから流れるニュース原稿を読んでいるようだ。
「アメリカでUFOを飛ばしていたのは私だという老人が現れました」
 画面にインタビューに答える白髪の白人男性が映し出された。
「この男性はネバダ州に住むジェイムス・スミスさん。
 1947年から銀色の円盤を飛ばしていたということです。仲間と編隊を組んでホワイトハウスの上空を飛んだこともあると話しています。
 証言の後、老人は取材陣の前で、実際に円盤を飛ばしてみせました」
 画面が野外に切り替わった。

 さっきの老人が、ログハウス前の草原に細長い五本の足で立っている銀色の円盤の底に潜り込むと、梯子を引き出して中に入ってゆく。
 やがて、底面が回転してずれると、円盤の構造は中心部を除いてすかすかとなり、大きなプロペラが姿を現し、甲高い金属音と共に回転しだした。
 回転が上がると、再びすかすかの空間は見えなくなり、円盤は浮上した。

 松本もこれにはがっかりした。
 もっと高度な文明のものすごい飛行原理に違いないと思っていたのが、ただのヘリコプターだったとは。
 しかし、それでは瞬間移動級のスピードが説明できないだろう。
 松本がそう思った矢先、円盤の外周に埋め込まれたロケットブースターらしきものが薄く火を吹いたのが見えた。
 円盤は一挙に移動した。
 しかし、外周も少し回転してるためか、一直線ではなく、停止するのに手間取って少し位置がきれいな直線上からぶれた。その動きがまたUFOっぽい。
 UFOはひとしきり、空をジグザクに飛んで見せると、発信地点に戻って着地した。
 円盤から降りてきた老人は親指を立てて笑った。

 外神田部長は吐き捨てるように言った。
「わかったろ?このサークルは消滅だ」
 はあー……
 松本も大きな溜め息を吐いた。
 

 †††
 
 老人がログハウスのバルコニーで新聞を読んでいると、近所の小学生の兄妹が歩いてやってきた。
 
「こんにちは、ジェイムスさん」
「いやあ、チャーリー、キャロル、学校は終わったのかい?」
「ええ、ジェイムスさん、またいろいろ教えてよ」
「いいとも」
 老人は兄妹をテーブルにつかせ、ミルクとクッキーをふるまった。

「それで、円盤はどうやって飛んでるの?」
 チャーリーがクッキーで宙に弧を描いて尋ねると、老人はうなづいた。
「この間、宇宙のあらゆる地点は固有の振動を持っていると教えたね」
「うん、波動で決まるんだね」
「だから円盤の外側に虚数波動の泡膜を張って、円盤の内側の振動を、行きたい地点の振動に同期すると、瞬間的にそこにしかいられない状態になって、移動するんだよ」
 チャーリーは頭をふった。
「難しくてわかんないよ」
 キャロルは老人を見つめて聞く。
「あのね、パパやママも一緒にテレビニュースを見たのに、ジェイムスさんの円盤はプロペラとロケットのインチキだって言うの。プロペラもロケットもついてないのに、どうしてプロペラなんて言うの?」
 老人は笑った。
「人間には『究極の恐れ』という仕組みがあるんだ。
 それは潜在意識にあって、例えば私の円盤などの未知なる受け入れがたいものを、すでにある受け入れやすい形に錯覚することで、ショックを避けるためなんだ」
「そうなの?」
「そうなんだ、全ての人間が同じように私たちを認識することはないだろう。
 だけど、素直で恐れを持たなくてもいいと悟った君たちには私の本当の姿が見える」
 キャロルはうなづいた。
「うん、ジェイムスさんはロズウェルのUFO博物館の人形そっくりだね」   了
 




ミステリーサークルはイギリスの老人の仕業だったという話がありましたが、UFOはどうですかね?


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gingak
  • Author: gingak
  • 銀河 径一郎
    (ケイイチロー・ギンガ)
    好きな言葉は『信じる』。
    『地球人も宇宙人』。
    写真はッシェル・ポルナ
    レフの真似です

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