銀河径一郎 小説、物語の部屋

銀河径一郎による不思議な物語、怖い話、面白い小説、ファンタジーなど。

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陽が沈むと、また熱が上がり出した。

肺の息苦しさと腰や胸の骨の痛みはひどさを増して、こころはナースコールのボタンを押した。


「痛いか?」

駆けつけた佐藤先生に、こころは無言でうなづくことしかできない。


「よし、痛み止めを注射してやるからな。

がんばれよ」


佐藤先生は点滴のペースを調整して、今までの薬より強い痛み止めを注射した。


よくドラマで見かける脈拍と呼吸数のモニターもつなげられた。


脈拍は毎分87、呼吸数は毎分28、体温は38.7。

酸素飽和度が91%しかない。

肺の炎症のため呼吸が浅いと判断した佐藤先生はこころに酸素吸入のマスクをつける。


「これをつけた方が呼吸が楽だからな」


こころは無言でうなづいた。


こころの母親も詰めていたが、面会のガラス越しにしか様子を見ることができない。

しかも、そのガラス越しのこころに酸素マスクがつけられたことで母親の気持ちはいても立ってもたまらないものになった。


処置を終えて、しばらく様子を見ていた佐藤先生はやがてクリーンルームから出た。


すると母親が待っていたようにつかまえる。


「先生、娘の病室の中に入って、そばにいてあげることはできないんでしょうか?

きっと心細いと思うんです」


佐藤先生は困った顔をした。


「お母さんのお気持ちはわかりますが、今のこころちゃんには絶対安静、ほんのわずかな細菌、ウィルスが怖ろしい敵なんです。

申し訳ありませんが、こらえて見守ってあげて下さい」


「今、どういう状態なんですか?」


「肺に炎症を起こしています。

そのために酸素の取り込みが落ちているので酸素マスクをつけました。

抗生物質の薬が炎症と闘ってますが、これは本来白血球の役目なので、白血球を増やす薬を入れてます。

肺の痛みと白血球が増える時に骨髄も痛むため、痛み止めを強いものに変えました」


「よくなるんですよね?」


「やはり今夜が山です。

危ない場合は、ステロイドを投与して、人工呼吸器をつけます。

人工呼吸器をつける場合は承諾書をいただきます」


「そんな、先生、必ず治すと仰って下さい」


「もちろんです。

絶対治ると信じて治療しています」



深夜、こころの状態を監視していた佐藤先生はステロイドを投与し、人工呼吸器を装着した。


こころは痛みと痛み止めとで朦朧とする意識の中で花畑を歩いていた。


いつかヒロキさんが連れてゆくと話した房総のような気がした。


菜の花畑を通り過ぎ、チューリップ畑を通り過ぎるとヒロキさんが立って笑っていた。

「やあ、こころちゃん」


「ヒロキさん、きっと会えると思ってた」


「うん、嬉しいよ」


「私たち、これからはずっと、ずっと一緒だよね!


「こころ、愛してるよ」

ヒロキさんは、隠しもせず目から涙をボロボロとこぼし始めた。


「どうしたの?

何で泣くの?」


「わかんないけど、涙が出るんだ」

私はヒロキさんの腕に包まれて幸せな気分だった。



(つづく)



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gingak
  • Author: gingak
  • 銀河 径一郎
    (ケイイチロー・ギンガ)
    好きな言葉は『信じる』。
    飛べなくても頭が悪くても
    地球人も宇宙人だ(笑)

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