銀河径一郎 小説、物語の部屋

銀河径一郎による不思議な物語、怖い話、面白い小説、ファンタジーなど。

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佐藤先生は、今まで見たこともない険しい顔になって言った。


「治療が辛いだけでなく、将来、妊娠できない可能性が非常に高いんです」


耳につながる奥が真空になった。

頭の中が真っ白だ。


それじゃあ、普通の生活には戻れないってことだよ!

うそでしょ!


「先生、どうしてそんな?」

母がやっとのことで問いかけた。


「薬や放射線の影響で、どうしても卵巣が傷ついてしまうんです。


しかし、幸い、卵子や卵巣のガラス化法による凍結保存という技術が、実用化されています。

ですから、それを使えば胚移植か自己移植という形により、自分で出産する可能性は開かれています」


「そうなんですか」


母はそう言ったが、私はショックの底で茫然としてた。


ひどすぎるよ、なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないんだろ。


前より辛い治療で、しかも妊娠という、女なら誰でもあるはずの未来が危なくなるなんて。


その時、母の手が私の手をぎゅっと握ってくれた。


「お願いします、先生、こころを助けてください、こころをどうか」


「もちろんです、僕もこころちゃんが健康になるよう全力を尽くしますし、


こころちゃんには応援してくれる友達もいっぱいいるみたいだし、きっとよくなると思いますよ」


そこで佐藤先生から難しい宿題が出た。


「そこで、難しい選択で申し訳ないんですが、薬だけで治療するか、骨髄移植するか、この1、2ヶ月考えてみて結論を出して下さい」


佐藤先生が言うと、母が尋ねた。


「あの、薬で治療して、ダメな場合は骨髄移植というわけにはいかないのですか?」


「骨髄移植をするなら、なるべくいい状態で移植したいですし、


骨髄移植はドナーを探したり、準備がかなりかかるので、早めに決めていただきたいんです。


ただ、この1ヶ月試す薬がこころちゃんにすごく効くようであれば、

その時は私から薬だけでもいけそうだというお話ができるかもしれません」


「わかりました、娘と考えてみます」

「将来は、こころちゃんから結婚の報告をしてもらうのを楽しみにしますから。

な、こころちゃん、きっと元気になって結婚できるよ」


佐藤先生の笑顔に、私は少しだけ作り笑いを返したけど、心の中は北風が通り抜けていた。

お母さんに肩を抱かれて廊下に出たけど、自然と涙がぽろぽろとこぼれてしまう。

今日の面談は、体は痛くなかったけど、心はマルクの時より、ずっと痛んだ。


生まれてきて一番苦しい痛みだ。


治療のために将来、妊娠できないなんて、悲しすぎる。


こんな辛い悲しいこと、ヒロキさんにだって、告白できないよ。


 f_02.gif プログ村

 
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gingak
  • Author: gingak
  • 銀河 径一郎
    (ケイイチロー・ギンガ)
    好きな言葉は『信じる』。
    『地球人も宇宙人』。
    写真はッシェル・ポルナ
    レフの真似です

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