短編競作「裏」企画 参加作品 お題「チョコレート」「鰻」「ガンダム」
「売れ残りには福がある」
暗い通りに、明るく照らし出された携帯ショップ。店内の棚には様々な色、デザインの携帯がずらりと並んで、まるで祭りの屋台のように賑やかだ。
俺は気がつくと店内に足を踏み入れていた。
明らかに浮いている緑色のハッピを着た女性店員がさりげなく近づいてくる。
「どうぞ、ごゆっくりお選び下さい」
俺は板チョコより薄い、シルバーの携帯を手にしてみた。
「カッコイイね、これはいくらになるの?」
俺の問いかけに女性店員がバインダーをチェックして言った。
「申し訳ありません、シルバーは在庫が切れてまして、こちらのショッキングピンクならありますが」
女性店員はピンクの携帯を差し出した。
「男でショッキングピンクはきついよ」
俺が拒否すると、
「じゃあ、あと、ライトブラウンもあります」
女性店員はライトブラウンの携帯を差し出す。
「このライトブラウンは、なんだ、えらいジジイ臭いね」
女性店員の眉が引き攣った。
「ではブラウンでも、模様入りなんかいかがですか、
ほら、猫目石模様です」
今度は茶色に黄色い縞模様が出てきた。
「なんかなあ、売れ残りのデザインばっかりだな」
俺の会心の一撃に、女性店員は降伏撤退を決めたようだ。
「はあ、やっぱり。何かありましたらお呼び下さい」
女性店員は肩を落として、ボールペンの頭をノックしてカウンターの奥に向かった。
と、その時、俺の目はポスターの隅に書いてある文字に釘付けになった。
「キミ、ちょっと!」
女性店員は怪訝な顔で引き返してきた。
「どうしました?」
「今、ガンダムストラッププレゼント中なの?」
俺がポスターを指差して言うと、女性店員は冴えない顔でうなづいた。
「あ、はい。なんですがぁ、数量限定なので、こちらもほとんど終了でして、
ガンダムやザク、アムロ、シャア、ホワイトベースはないんです」
「あるのは?」
「えーと、地味なキャラがひとつだけ残ってるはずです、
えーと、名前がハロ? ハロなんて人、ガンダムにいましたっけ?」
女性店員は自信なさそうに呟いたので、俺はムッとした。
「何を寝ぼけてんだよ、ハロちゃんがガンダムで一番可愛いキャラじゃないか!
じゃあ、ひとつ貰うよ!」
「え?あ、ありがとうございます。
じゃあ、こちらのライトブラウンでよろしいですか?」
「おお、いいねえ、よく見ると琥珀みたいでカッコイイじゃん」
携帯一式の紙袋を持ち、笑みを浮かべた客が軽やかな足取りで店を出て角を曲がると、女性店員は奥から出てきた店長に声をかけられた。
「よく売ったな、あの鰻の蒲焼きみたいな売れ残り」
「ストラップで気が変わったみたい、ハロちゃんて言ってた」
「ケッ、いい歳こいて、ハロちゃんだと」
「だめだよ、店長、客の悪口言っちゃあ、アハハハ」
店長と女性店員はそこで爆笑した。
俺は急に鼻がムズムズしてきた。
ファッ、ファッッ、ハックショーンッ!
「やばい、花粉症始まったかあ?
でもハロちゃんのストラップ、ゲットしたから、今日は幸せだなあ」
俺は空をちらと見上げて、独身寮への道を急いだ。
空には満月が、ハロのような顔で静かに微笑んでいた。 了

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「売れ残りには福がある」
暗い通りに、明るく照らし出された携帯ショップ。店内の棚には様々な色、デザインの携帯がずらりと並んで、まるで祭りの屋台のように賑やかだ。
俺は気がつくと店内に足を踏み入れていた。
明らかに浮いている緑色のハッピを着た女性店員がさりげなく近づいてくる。
「どうぞ、ごゆっくりお選び下さい」
俺は板チョコより薄い、シルバーの携帯を手にしてみた。
「カッコイイね、これはいくらになるの?」
俺の問いかけに女性店員がバインダーをチェックして言った。
「申し訳ありません、シルバーは在庫が切れてまして、こちらのショッキングピンクならありますが」
女性店員はピンクの携帯を差し出した。
「男でショッキングピンクはきついよ」
俺が拒否すると、
「じゃあ、あと、ライトブラウンもあります」
女性店員はライトブラウンの携帯を差し出す。
「このライトブラウンは、なんだ、えらいジジイ臭いね」
女性店員の眉が引き攣った。
「ではブラウンでも、模様入りなんかいかがですか、
ほら、猫目石模様です」
今度は茶色に黄色い縞模様が出てきた。
「なんかなあ、売れ残りのデザインばっかりだな」
俺の会心の一撃に、女性店員は降伏撤退を決めたようだ。
「はあ、やっぱり。何かありましたらお呼び下さい」
女性店員は肩を落として、ボールペンの頭をノックしてカウンターの奥に向かった。
と、その時、俺の目はポスターの隅に書いてある文字に釘付けになった。
「キミ、ちょっと!」
女性店員は怪訝な顔で引き返してきた。
「どうしました?」
「今、ガンダムストラッププレゼント中なの?」
俺がポスターを指差して言うと、女性店員は冴えない顔でうなづいた。
「あ、はい。なんですがぁ、数量限定なので、こちらもほとんど終了でして、
ガンダムやザク、アムロ、シャア、ホワイトベースはないんです」
「あるのは?」
「えーと、地味なキャラがひとつだけ残ってるはずです、
えーと、名前がハロ? ハロなんて人、ガンダムにいましたっけ?」
女性店員は自信なさそうに呟いたので、俺はムッとした。
「何を寝ぼけてんだよ、ハロちゃんがガンダムで一番可愛いキャラじゃないか!
じゃあ、ひとつ貰うよ!」
「え?あ、ありがとうございます。
じゃあ、こちらのライトブラウンでよろしいですか?」
「おお、いいねえ、よく見ると琥珀みたいでカッコイイじゃん」
携帯一式の紙袋を持ち、笑みを浮かべた客が軽やかな足取りで店を出て角を曲がると、女性店員は奥から出てきた店長に声をかけられた。
「よく売ったな、あの鰻の蒲焼きみたいな売れ残り」
「ストラップで気が変わったみたい、ハロちゃんて言ってた」
「ケッ、いい歳こいて、ハロちゃんだと」
「だめだよ、店長、客の悪口言っちゃあ、アハハハ」
店長と女性店員はそこで爆笑した。
俺は急に鼻がムズムズしてきた。
ファッ、ファッッ、ハックショーンッ!
「やばい、花粉症始まったかあ?
でもハロちゃんのストラップ、ゲットしたから、今日は幸せだなあ」
俺は空をちらと見上げて、独身寮への道を急いだ。
空には満月が、ハロのような顔で静かに微笑んでいた。 了
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