銀河径一郎 小説、物語の部屋

銀河径一郎による不思議な物語、怖い話、面白い小説、ファンタジーなど。

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 卓郎が都心の高級ホテルのスイートに入ると、白いミニのスーツを着た楓花がソフアで雑誌を見ていた。

「やあ、待ったかな?」
「ちょっとね」
 卓郎は五十代後半、楓花は十九歳である。
「じゃあ早速始めようか」
 卓郎がワイシャツからネクタイを引き抜くと、楓花は不機嫌に言う。
「卓郎ちゃん、せっかちだなあ」
「いいから、早く、早く、もう待ちきれないよ」
「たくっ、そういうのヤなのに」
 卓郎が急かすと、楓花は仕方なくバスルームの方に消えた。
 シャワーの音が流れ、楓花の鼻歌が響く。
 卓郎はバッグから一眼レフを取り出した。楓花のあられもない姿を撮るのが彼の趣味なのだ
 卓郎はカメラをバスルームのドアに向けて構えている。

 ドアが勢いよく開いて、楓花が部屋に入ってきた。
「おお、いいね、いいね、そこでウィンクもらえるかな」
 カメラの自動シャッターの音が鳴り響く中、楓花は右手の人差し指と親指を顎の前に構えて、反対側にお尻を突き出した。
「可愛いよ、いい、いい、ちょっと持ち上げて」
 楓花は左手でピンクのスカートの後ろから伸びた尻尾を持ち上げた。
「キター、キタね、そこでまわってニャオーて言って」
 楓花はくるりとまわると、猫耳のわきに猫手を持ち上げて、
「ニャオ~ン」
「くーっ、痺れた、痺れたよ、萌えるなあ」
「ニャ~オ」
「よし、テーブルに乗ってみて」
 楓花は猫手をテーブルに着き、猫足も乗せて四つん這いになった。ピンクのメイド服に、ピンクの猫耳、猫鈴、猫手、猫足、猫尻尾をつけた姿は、アキバおたくの心を鷲掴みにして離さない天使降臨そのものだ。
「ニャ~ォ」
「いいね、いいね、舌をペロリと出して」
 楓花が舌を出して猫手を舐めるようにすると、卓郎は叫んだ。
「ああ、痺れた、これだよ、日本が世界に誇るアキバ文化の頂点、猫キャラ。
 これで世界を征服できるぞ、確信したよ」
 その時、卓郎の携帯電話がドラえもんの着信音で鳴った。
「もしもし、そうか、じゃあ行くわ」
「卓郎ちゃん、お仕事?」
「うん、ごめんな、でも今日も最高によかったよ、また頼むわ。
 これ、少ないけど」
 卓郎が封筒を渡すと、楓花は涙目になる。
「私、お金のためにやってるんじゃないよ」
「別に変な意味はないよ、秋刀魚定食でも鰻定食でも、ここで食べればそれぐらいするんじゃないの。口止めなんかするつもりもないから」
「私だって卓郎ちゃんに迷惑なんかかけないよ」
 卓郎はネクタイを締め直すと「ありがと、それじゃあ」と言いながら外に出た。
「せわしいなあ」
 廊下を歩きながら言うと、秘書はあやまる。
「すみません、移動の時間があまりないので急いで下さい」
「うん、で次の予定はどこ?」

 楓花はバレンタインのプレゼントを渡しそこねたのに気付いて、猫キャラの衣装のまま慌てて部屋を走り出て卓郎を追いかけた。

 アキバの駅前通り、若者たちが歩道に溢れていた。
 小型バス型の宣伝カーの舞台に卓郎が昇ると、拍手と歓声が上がった。ブーイングも少しあるが歓迎の声が圧倒的だ。
「えー、足を止めていただき、ありがとう、えー、私は……」
 その時、卓郎は、道路脇の信号機制御箱の上に立った、ピンクの猫キャラに気付いた。
 お、楓花タン、忘れ物か?
 楓花はハート型の箱を頭の上で振って何か叫んでいる。

「先生、続きを」と秘書が催促する。
 なんだ、あれは?今週、なんかイベントがあったかな?もしかして、今週はハロウィンか?ハロウィンといえば、キャラメルか?
「……キャラメルが立ちすぎて、党内から批判の多い虎万卓郎です」
 うっかりこんがらがった卓郎を、横から秘書が注意する。
「先生、違います、キャラメル、違いますよ」

 そうだ、バレンタインだ、思い出した。 
「間違えました、チョコレートが立ちすぎて、党内から批判の多い虎万卓郎です」
 聴衆がドッと受けたが、秘書は、先生、チョコじゃなくて、キャラですと注意する。
 いいんだよ、もう、受けたんだから。
 今日も人気赤丸急上昇だ。
 卓郎は笑みを浮かべて熱弁を振るう。
「いいですか、日本のアキバは新しい文明の発信基地なんです。
 今、フランスパリへ行ってごらんなさい、みんなが日本のアニメに夢中ですよ。
 私が行くとヒーロー扱い、大統領になってくれと言われるんだから」
 聴衆がまた笑った。

「いや、ほんと、ちょっと大統領選出れないかと調べさせましたよ。
 ハリウッドだって、日本のアニメに影響されてる。
 鉄腕アトム、ドラえもん、みんなアニメのロボットだ。そのリアル技術で日本は世界のトップに立ってるんですよ。
 DDH-182『みらい』(※)の大きいのを30隻ばかり作って、ガンダムのモビルスーツを実際に開発して、百体ぐらい実戦配備すれば、日本はどこからも侵略されない。
 え、5体ぐらいで十分だって?
 それが、そうもいかないのが、政治なんですよ。
 そしてニュータイプの養成機関も作らなければならない……」

 信号機制御箱の上に立っていた猫キャラの楓花は、卓郎の演説とそれにうなづく聴衆に確信した。
 日本の夜明けは、卓郎ちゃんの手にかかってるんだ!              了
 

※DDH-182『みらい』 「ジパング」に登場したヘリ搭載イージス艦のこと

◆この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。

 f_02.gif プログ村

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gingak
  • Author: gingak
  • 銀河 径一郎
    (ケイイチロー・ギンガ)
    好きな言葉は『信じる』。
    飛べなくても頭が悪くても
    地球人も宇宙人だ(笑)

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