この部屋にいる限り、原則として家族しか面会できない。
ただし恋人は特別に面会できるらしい。
ヒロキさんのことを考えたが、さすがにクリーンルームのガラス越しにインターフォンで初対面はちょっと遠慮だ。
昼すぎに、サトミからメールが来た。
《おはよー、起きたあ?》
あー、私が病気になろうがなるまいが、サトミの日曜は午後から始まるんだな。
あんたは幸せものだよ、と思いながら返事する。
《残念ながら病院は日曜だからって寝てられないんだ。
投薬、点滴は平日と同じ時間にくるんだよ》
《ひどいね、遠慮して遅く来りゃいいのにね》
《いや、薬は必要だし、ひどくはないから(笑)》
《どうなの、彼とは?
まだ会ったりできないわけ?》
《うん……私の状態が退院とか外出無理だから》
《そうなんだ。見舞いもだめだもんね。
退屈してるでしょ?》
《まあね、M1グランプリのDVD、何度も繰り返して観てるよ。
繰り返しても笑えるから漫才はいいね》
《でも来週には退院できるって言ってたね。
部面とカオリでパーティーしてあげるからね》
《ありがと、サトミ》
《じゃあね、また!》
私は携帯の袋を置くと、ベッドから立ち上がり、窓際から中庭を眺めた。
都会の中のささやかな緑だけれど、自分が病気になってみると、その緑の輝きがとても眩しく見える。
空を眺めると、ゆっくりと流れる雲も、おひさまの陽ざしもきれいだ。
なんだろ、この景色に生命を感じる。
健康な時は全然感じなかったのに。
そして、緑に、雲に、おひさまに、生命を感じている私の生命も、ちょっとかもしれないけど輝いているに違いない。
私はこの生命をこれからもずっと生きてみせるぞ。
この気持ち後でヒロキさんにメールしとこう。
考えてるとメールが着信した。
ヒロキさんかな?
そう思って開くと翔子ちゃんだった。
《こころお姉ちゃん、こんにちわ!
家族でレストランに来てるの。
写真撮ったので送るね》
下の写真に、レストランの席で弟らしき男の子と並んで笑っている翔子ちゃんがいた。
ふふ、こんな笑顔、病院で見たことなかったよ。
こころは、翔子ちゃんの笑顔が自分のことのように嬉しくてたまらなかった。
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