銀河系一朗 小説、物語の部屋

銀河系一朗による不思議な物語、怖い話、面白い小説、ファンタジー、エッセイをお楽しみ下さい。

クリーンルーム9日目

今日は金曜。

そう、佐藤先生にうんと早ければ夜に退院と言われた金曜日だ。

薬のおかげで、だいぶ体の調子が上がってきたのを感じてる。

今日、マルクして結果がよければ第一段階は退院じゃない?

そうすれば、ヒロキさんと海辺でデートだ!


自然と顔がニターとなってる。

えへへ、キモイよ、私。


そう思ってると、佐藤先生が回診に入って来た。

「おはよう」

「おはようございまーす」


なんか緊張する。

「どう、よく眠れた?」

「あんまり。薬でテンション上がってるよ」

「そうだな、仕方ないな」


思い切って私から聞く。

「で、退院はどうですか」

白い忍者のように目だけ出した佐藤先生は手に持ってる書類をめくって、

「うーん、残念。朝の採血の結果で白血球の数がまだ上がりきってないから、今日はだめだな」

「土曜か、日曜は?」

「この前話しただろう、土日はマルクできないから無理だよ」

「どうしてもだめえ?」

「困らせないでくれよ。どうしてそう土日にこだわるんだ?」


私は迷ったけど、思い切って言った。

「あの、彼がいるの、病気のことも告白して応援してくれて。

その彼がね、海に行こうて誘ってくれてるの。

だけど彼も月曜すぎると入院なんだよ」


「そうかあ。それは知らなかった。よかったな」

「彼のこと、みんなには秘密にしといて」

言いながら私、赤くなってるよ、たぶん。

「うん、秘密は守るよ。

で、その彼もどうしても土日じゃなきゃだめだって言ってるのか?」

「そんなこと言わないけど……」

「じゃあ、今回はあきらめて次回のチャンスに行きなよ」


私は仕方なく「うん……」


「で、彼はどんな病気なんだ?」

「えーと、横文字で忘れたけど、肺がやられてるんだって」

「ふうん、そうか。

とにかく今回はごめんな」

「……」

私はもう返事する気力もない。

佐藤先生は「じゃあな」と言って出て行った。


私は重い気持ちで携帯のビニール袋を手にした。

《ヒロキさん、ごめんなさい。

やっぱり今回は私の退院間に合わないみたいです(泣)

せっかくのチャンスだったのに》

八分ほどで返事が来た。

《それは仕方ないじゃないか。

デートはまたできるよ。

元気を出しなよ!》

ヒロキさんに励まされたが、こころはそれでも落ち込んだ。


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gingak
  • Author: gingak
  • ( ぎんが けい いちろう )
    イチロー・K・ギンガ。
    好きな言葉は『信じる』。
    信じるより計算が先立つ現代、『信じる』ことを取り戻したい!

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