最初のうちは、恋の病きたなとかはしゃいでいた。
でも、それから吐き気もひどくなってきて、眠れない。
ナースコールしてクリーンルームの看護士さんから吐き気止めをもらう。
さっきはあんなにはしゃいだのに、もう落ち込んできた。
やっぱり私は重い病人なんだ。
デートなんて無理かもしれない。
それにもうすぐ髪の毛も全部抜けちゃうからバンダナかなんかしなきゃならない。
そういえば、顔もむくんできている。
クリーンルームを出る頃はもっとひどいだろう。
今よりひどい顔でヒロキさんに初めて会うなんて、いやだ。
メールのヒロキさんの笑顔を見ながら、涙があふれてくる。
きっとヒロキさん、優しいから気にしないでいいよって、言ってくれるかもしれないけど。
絶対、私のこと、嫌いにならないでくれるかな?
それに私はずっと生きられるのかな?
ヒロキさんに叱られるけど、そのことが気になる。
深夜だったけど、私はサトミにメールした。
《ヒロキさんとのデート、あきらめようかな?》
速攻で返事が来た。
《何よ、もう弱気になって。
ヒロキさんは、こころがタイプって言ってくれたんだから心配ないよ》
《だって、退院の頃、私、髪の毛も全部抜けて、
顔もむくんで、ひどい顔になるんだ。
嫌われるかも》
速攻で返事が来る。
《病気なら仕方ないじゃん。
相手のヒロキさんはこころが病気だってわかってるんでしょ。
問題ないよ》
私は一瞬迷ったけど、正直に病名をメールした。
《サトミ、私、白血病なんだ。
何度も入院しても、助からないかもしれない》
それまで、速攻で来てた返事の間隔があいた。
私は沈黙した携帯に不安になってくる。
病名隠してたの怒ったかな。
じっと眺めてると、メールが来た。
《こころ、水クサイじゃない。でも告白してくれてありがと。
あんたとは親友だから、これからも応援するからね!
私の血でよければいくらでもあげるよ!》
《ありがと、サトミ、嬉しいよ》
《ヒロキさんはこころの病名、知ってるの?》
《うん、私が弱音を吐くと、叱って、励ましてくれるの》
すると、今度は電話の着信だ。
「あ、サトミ、ありがと」
「うん、ヒロキさんて、めちゃくちゃいい男だねえ。
こころを叱って、励ましてくれてるのか。
安心したよ。
そいつなら私の可愛いこころを嫁にやってもかまわんぞ!」
私はサトミのおやじ口調に噴き出した。
「変なの」
「ちょっと、パソコンで調べてるけど、白血病って言っても、今は治るひとの方が多いじゃない。
こころも絶対に大丈夫だよ」
「ありがと」
「たまには今みたいに不安になるかもしんないけど、
こころには、私もカオリも、誰よりヒロキさんがついてるんだから、
いい?病は気からだよ、
治るって信じて頑張るんだよ!
また、あきらめるとか言うなら、私がこころの体に入れ替わって
ヒロキさんに抱擁されまくってきてあげるから」
「あ、あのね、それでも親友ですかあ」
私が笑うと、サトミも笑ってる。
「あはは、元気が出てきたみたいじゃん。
例のセンセの『愛は勝つ』は聞いてるの?」
「あ、今、聴くよ。
サトミ、ありがと、ほんとにありがと」
こころは「愛は勝つ」を聴きながら、また勇気が湧いてくるのを感じた。
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