朝食の後に、看護士のリカさんから、錠剤が何個も渡される。
「こんなに?
私、今まで薬飲んだ記憶あまりないのに?」
「そうなんだ、一挙にトップになれるわよ」
リカさんは、サトミみたいな言い方で私を笑わせる。
「なんの薬?」
「そうね、胃が荒れないようにとか、
点滴で腎臓が荒れないようにとか、
このプレドニンは悪い細胞をやっつける薬、
苦いけど、副作用でしばらくして食欲増進するよ。
メインの薬は点滴で3本でてるから」
錠剤を飲むと、今度は点滴を左の腕から入れられた。
こころは隣のベッドを振り向く。
「翔子ちゃんもこんなにした?」
翔子ちゃんはマンガから顔を上げてピースサイン。
「もちろん」
「それで副作用とかは?」
「第一段階はあまりなかったよ。
ちよっと吐き気と、顔がむくんできたぐらいかな」
「じゃあ楽勝だね」
「それは人によって違うんだって。
こころお姉ちゃんは少し歳いってるからな」
クッ、このコ、可愛くないよ。
そう思ってどう言い返そうかと考えてたら、佐藤先生がやって来た。
「どうだい?
昨夜は眠れたかい?」
「ええ、ぐっすり」
ホントは消灯の後、また少し泣きそうになった。
でも、ヒロキさんに、絶対に病気に勝つと誓ったからには、泣いてなんかいられない。
そう思ったら、なんとか涙が止まったのだ。
「じゃあ、強いお姉さんに、お昼前に、ルンバールをがんばってもらおうかな」
「ルンバール?」
「最初の日、マルクやっただろう、あの形で今度は注射するんだ」
ちょっとびびったけど、私には強い誓いがある。
「もう、ルンバでもサンバでも好きなだけして下さい」
佐藤先生は笑い出した。
翔子ちゃんも私にピースサインを送ってくれた。
「じゃあ、詳しい説明は後でまたするから」
母が来ると、こころは佐藤先生の説明を聞いて、検査室に入った。
普通の点滴では脳の方まで薬がまわらないので、骨髄の内側から入れるということらしい。
「じゃあ、いくよ」
マルクの時と同じように腰をゴリゴリされて、
汗がにじんでくる。
「骨髄を吸引するよ、頑張って」
こころは心の中につぶやく。
こころは頑張ってる、頑張ってる、早く終わって!
しかし、すぐには終わらない。
「もうちょっとだよ」
こころは頑張ってる、頑張ってる、もういいってば!
「じゃ、今度は薬を入れるね」
しかし、感覚はない。
「よおし、終了、頑張ったな」
「えへへ、すごいでしょ」
と言うそばから、腰にしびれがじーんと湧き起こった。
「先生、しびれてきた」
「うん、1時間ぐらいじっと安静にしててね」
こころはしびれを我慢しながら、自分が最初のマルクの時より強くなっていると感じた。
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