佐藤先生は検査台に横向きになった私の腰に麻酔の注射をして、背中に声をかける。
「こころちゃん、針が骨に届く時、かなり痛いけど頑張ってね」
ちょ、ちょっと痛くないように麻酔をしたのに、かなり痛いってナニ!
反論を口にする暇もなく、腰の骨をゴリ、ゴリとされる痛みが走った。
汗がにじんでくる。
「骨髄を吸引するよ、さっきより痛いから、頑張って」
さっきより痛いの?ずるい!
そう言う間もなく衝撃が走った。
反射的に涙が溢れ出した。
叫び声も出そうだったけど、必死でこらえた。
「はい、終了。頑張ったね」
「先生、もう嫌いになりそう」
私は背中の佐藤先生に言ってやった。
「僕も辛いんだよ、こころちゃんにこんな痛い検査してさ、
でも、この検査しないと病気が正確にわからないんだ。
それはわかってくれよね」
確かにそうなんだろうけど。
でも、痛かった。
「しばらく痛み残るから、ここで静かに休んでっていいよ。
お疲れ様、ごめんな」
「っ、はあい」
佐藤先生に言われてそのまま検査室でしばらく休んだ。
それから検査室から出て、休憩室の隣の電話用個室みたいなところに入って携帯を取り出した。
まずメールした相手はサトミでもカオリでもなくヒロキさんだ。
こういう時は、同じ境遇にあるヒロキさんの返事が一番頼りになりそうだから。
《ヒロキさん、助けて、もう検査ヤダ〜
腰の骨の検査だけど
あまりの痛さに泣いた(泣)
検査で死ぬかと思た(泣)》
でもヒロキさんの返事はすぐに来ない。
サトミとカオリにも同じようにメールして、すぐに励ましの返事が来た。
《検査、大変だったんだね。
ココロ、負けるな!》
《検査、そんなに痛かったの?
大変だったねぇ
でも、結果はきっと大丈夫だょ!》
サトミとカオリの返事にうなづいて、病室に戻ると、さっきは留守だったこころの隣のベッドに小学3、4年の女の子がいた。
頭に毛糸の帽子をかぶり、マンガの本を読んでいる。
「こんちは」
「こんちは、お姉ちゃん、新入りね」
「まあそう、私は川津辺こころ、
あなたの名前は?」
「秋野ショウコ、飛翔っていう漢字の翔に子だよ」
「よろしく」
「まあね、わからないことがあったら聞きなさい」
「へえ、えらいんだ」
「ここでは私が先輩でしょ」
「はいはい、お願いします。
ところで、先輩、腰にマルクはした?」
「うん、何回もしたよ。
お姉ちゃん、さては、泣いたんでしょ?」
翔子ちゃん、にやにやと笑いやがる。
「な、泣かないわよ。
ちょっと目から冷や汗が出たけどね」
「ハハハ。
でも、胸にするとね、もっと痛いよ」
「え、まだ上があるの」
「でもマルクは一瞬の痛みでしょ。
辛いのは薬の副作用だよ。
一日中、吐き気とか下痢はいやだよ」
「そうか、入院すると大変なんだね」
「自分も入院してるじゃん」
「私は検査だけかもしれないでしょ」
「そうかな」
「そうだよ」
私が言い返してると、携帯がメール受信で震えた。
きっと、ヒロキさんだ!
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