なんとか受付を済ませて、呼ばれたと思ったら、今度は診察室の前の中待合で待たされる。
ようやく診察室に呼ばれると、内科の六十歳ぐらいの先生が眼鏡の奥の目尻をさげて質問した。
「どうしました?」
「授業中に急に倒れたらしいんです、自分ではよく覚えてなくて」
「頭は痛いですか?」
「いえ」
「しばらく注意して下さい。
ぶってると頭の中の症状が後から出る場合もある。
それで熱は高いですか?」
「普通ですね」
「肩とか腰とか背中とか、痛いところはありますか?」
「あ、卓球部なんで、腰は少し痛いかな」
「そう、卓球ね、最近、体が疲れるとか」
「少し」
「生理は順調?」
「はい」
「ひどい鼻血とか、あざとか、口内炎とか、ありませんか」
「部活でぶつけたみたいで足のすねに青あざがいくつか出てますけど」
私がソックスをおろして見せると、先生はうなづいた。
「ふむ、ちょっと血液調べましょうね」
看護師のお姉さんが手早く採血をする。
先生は私の胸に聴診器をあてて、それから診察台でお腹を触診して言った。
「こっちは大丈夫ですね」
「あの、もう帰って、いいですか?」
「中待合でしばらく待って下さい、検査結果がすぐ出ますから」
私は溜め息を吐いて、診察室の外のソフアで待った。
やっぱり大病院だけあって、せわしないし、冷たい感じ。
今頃、授業は私の苦手な理科総合のはず、ちょっと嬉しい。
だけど、テストのこと考えたら、後でますます困るかもな。
そんなことを思ってると、看護士のお姉さんが慌てた感じで出てきた。
私を見つけると「川津辺さん、入って下さい」と呼んだ。
中には、診察を終えたおじいさんがまだ上着を着終えてないというのに、なんて落ち着きがないと私は思いながら座った。
すると先生は眼鏡から目を睨むように細めて言い放った。
「気になるところがあるので、今すぐ検査入院してください」
びっくりして、息が止まった。
医者にかかるのも珍しい私が検査入院だなんて、冗談みたい。
そもそも私はそんなに具合が悪いわけでも熱があるわけでもないのだ。
「あの、今すぐ?
検査で入院?
私がですか?」
「そう、すぐ家の人に連絡して、必要な物を持ってきてもらって下さい」
「どこが悪いんですか?
私、学校行きたいんで、薬もらって済ませたいんですけど」
「こころさんは、血液の難しい病気かもしれないから詳しい検査が必要なんだ、わかったね?」
先生は私の希望を却下すると、看護士に書類を渡した。
看護士のお姉さんは、急に作った笑顔で言う。
「今から入院病棟受付に入って手続きして下さい。
必要な物のリストを受け取って、お家に連絡して下さいね」
入院なんて一度もしたことなかったのに、ついてない。
廊下に出た私は、空いてる長椅子に腰掛けて、サトミとカオリにメールする。
《今、病院なんだけど、検査ですぐ入院しろって言うんだよ。
私は熱もないのにさ、おかしくない?》
2発病-3 に続く
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